金利は管理相場下でのボックス圏の動き 市場動向を読む(債券・金利)
考えられるひとつのカタリスト(触媒)としては、現在、主要先進国で総じてボックス圏相場に入っている株式市場が、本格的な上昇を開始することであろう。それが将来の世界経済の想定以上の高成長を織り込む動きであるとか、あるいは株価上昇の資産効果それ自体が世界経済に大きなプラス効果をもたらすとの期待が生じるならば、日銀の金融緩和の時間軸にもなにがしかの影響が及ぶかもしれない。
もうひとつ想定されるカタリストは、日本のCPI(消費者物価)が予想外の水準に到達してくることであろう。日本の金融緩和の時間軸が米国に比べて大幅に長いのは、1980年代以降、一貫して米国を平均して2%程度下回ってきた日本のインフレ率の目標を、米国並みの水準に設定したことが大きい。
CPI上昇率が米国並みに近づく兆しは見られない
もし過去数十年間の日米の経済構造の違いが大きく変質し、日本のインフレ率が米国並みに近づいていくという兆しが見えてくるようであれば、イールドカーブの水準、形状は激変を迫られることになる。当然、現在のように米長期金利水準との対比で極端に日本国債の金利の水準が低い状況は維持されえない。
しかし、これら2つのカタリストのうち少なくとも後者のほうに関しては、今後、数カ月中にも生じうる変化とは考えられない。確かに足元でコアCPI(生鮮食品を除く消費者物価指数)の前年比は着実に上昇してきているが、それは主として昨年秋以降加速した円安によるものだ。
もちろん、需給ギャップの縮小による効果や、テレビ、パソコンなどデジタル製品の大幅な価格下落が止まってきている影響もあるのだが、それらは、リーマンショック前の数年間の好況期にも同様に見られていた事象である。円安による前年比押し上げ効果が減衰した後に、CPI上昇率が米国並みの水準にまで切り上がっていくような構造変化は、まだ兆しとしても、見られていない。
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