7位はカルソニックカンセイの309件。海外拠点での社外通報窓口の拡大や利用促進で前年234件から大きく増加した。
以下、8位日本電信電話304件、9位TDK300件、10位SOMPOホールディングス270件と続く。
巨額の不正会計で大きく揺れた東芝は13位の208件。第三者委員会から「少ない」と指摘された2年前(2013年度)の61件、前年31位の88件から急増した。
2015年10月には従来の内部通報制度に加え、社外取締役で構成される監査委員会に直接通報できる「監査委員会ホットライン」を新設。経営トップらの関与が疑われる事実に対しても通報できる仕組みとなった。208件の中にはこの通報も含まれ、徐々に効果が出始めている。
内部通報数の「適切な基準」をどう考えるか
ただ、この件数が同社で適切な数字なのかはわかりにくい。そこで、一つの見方として従業員数と対比してみる。東芝の2015年度の単独従業員数3万6601人を件数208件で割ると、176.0人。参考までに上位の製造業では6位のIHIは単独従業員数8571人で1件当たりでは25.7人。ほかに7位カルソニックカンセイは11.8人、9位TDK15.1人、11位アイシン精機56.5人などだった。東芝も着実に成果を上げているが、上位の製造業企業と比べるともう一段の件数増加に取り組む必要がありそうだ。
単独従業員数を基準にすることには問題も多い。通報ができる対象者はグループ会社を含む場合もあるし、正社員以外のパートやアルバイトが含まれることもある。通報可能な人数が明確ではないため、単独の従業員数を使った数字はあくまでも参考データのひとつだ。
こうした点を踏まえたうえで上位100社の通報1件当たりの従業員数を見ると、100人未満が58社、200人未満は81社だった。過去も上位100社はほぼ同じ状況で、参考ではあるが、「100人に1人が通報する」という状態は通報件数のひとつの目安になりそうだ。
実際の内部通報では、窓口に「個人的な不満をぶちまける」ケースがあると毎年のように聞く。社内の担当者の負担は非常に大きい。しかし、それでも少しでも気になることを自由に発言できる環境であれば、早めに問題点が浮かび上がってくる可能性は高くなる。ただ、多くの一般社員は総務部などの窓口にはなかなか連絡しにくいかもしれない。
それを考えると、まだ主流ではないが、IHIのように外部に一本化というのも、内部通報制度をさらに広げるための有効な方法と考えられそうだ。
日本全体で見ると、内部通報制度はまだ機能しているとはいえない。まず数を増やしていくことを重視すべき段階の会社は数多く存在する。先進企業の事例を参考に各社に合った窓口設置等の取り組みを考えていくべきだろう。
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