人間の成長は「属する集団」次第という真実 子どもの学力向上や英語習得に必要なこと

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同調圧力が最も強いのは、思春期以前の子ども時代だ。10代になると、同調しない者を罰する必要性はほとんどなくなる。その頃になると無理やり同調するのではなく、集団の一員になりたいという気持ちから同調するようになるからだ。

自己像の設定

クラスという集団の中でどんな自己像を確立するかは、子どもの学力にも大きくかかわってくる。教師が子どもたちを読書の得意な子と苦手な子とに分けると、得意な子の読解力はますます向上し、苦手な子の読解力はますます低下する。

これを「集団対比効果」と呼ぼう。この2つの集団ではそれぞれ異なる規範がつくり出されるため、異なる行動、異なる態度が要求されるようになる。集団対比効果はまさにくさびのようにはたらく。そのくさびは2つの集団間にあるごくわずかな差異に打ち込まれ、裂け目を広げる。こうした効果が生まれる原因は、人間に深く根付く自分の所属集団への忠誠心にある。人は自分の所属集団に最も好意を寄せるようになる。

「読書の苦手な集団にもそれが当てはまるのか」と疑問をいだくかもしれない。答えはイエス。読解力以外のこと、たとえば性格や容姿、もしくは運動神経では他人よりも勝っていると思うかもしれない。学校とはつまらないところで、そこで優秀な成績を残すやつはバカで、いい子ぶりっ子で、ご機嫌取りだという態度をとるかもしれない。

そうした態度は、時間経過とともにいっそう膨れ上がる。初めは仲間にわずかに劣っていただけの子どもも、自分を賢くするはずの事柄を避けるようになる。その結果、彼らはますます落ちこぼれてしまう。一方で、ほかよりもわずかに先を行っていた子どもは脳の訓練を繰り返す。

教室内の子どもたちを無作為にAチームとBチームに分けたとしよう。Aチームに優秀な生徒が2人おり、Bチームにはついていけない子どもが1人か2人いた場合、両チームの当初のIQ(知能指数)平均値が同じであったとしても、両チームの学業に対する態度は対照的になるかもしれない。

そのまま数年間学校に通った後、彼らが引き続きAチームとBチームとして自分たちを認識していたとしよう。子どもが一緒に過ごすのは主に同じチームの仲間で、Aチームの仲間ならば、学業に励んでいることだろう。Bチームであれば、学業をバカにしているに違いない。当初は学業への態度が違っていただけだが、それがIQの平均値の違いとなって現れる。

行動遺伝学者たちによると、IQの遺伝率は年齢とともに増加するという。年配者では遺伝率は80%に上る。ただし、その大部分は遺伝子の直接的な影響によるものではなく、人々が子ども時代に、そして大人になってから、自分で決断したことによるものだ。

初めのわずかな遺伝的差異が、そうして大きく膨らんでいく。テレビを見ようか、それとも宿題をしようか。野球をしようか、それとも図書館に行こうか。ブリタニーのグループに居続けようか、それともブリアンナのグループに乗り換えようか。大学へ進学しようか、そこで何を専攻しようか。ロジャーと結婚すべきか、それともロドニーとか。こうした決断が人生にどのような結果をもたらしたかが、IQに及ぼした影響として表面化するのだ。

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