新法施行に悩む東京地検・高検トップの素顔 司法取引・共謀罪の運用に妙薬はなし
東京高検のトップである検事長に就任したのは稲田伸夫氏(61)。仙台高検の検事長から横滑りした格好だ。稲田氏は東京地検の検事時代にゼネコン汚職事件を3年半に渡って手がけたことがある人物だ。
印象に残る事件は普通の殺人事件だったという。具体的にどんな事件だったかは言明を避けたが、「普通で単純な事件だが、なぜそうなったのかが印象に残っている」のだそうだ。
ゼネコン汚職の公判を3年半担当した東京地検時代も印象が強いという。仙台高検時代の印象を聞かれると「仙台は全国的に見て放火事件が多く、家族のもめ事を動機とした根の深い放火が多かった」と述べた。
供述を得にくくなっている
司法取引をどう活用していくか。これについて稲田検事長は「司法取引はオールマイティではない。司法取引の必要がある事件なのかどうか、検察の知力を出し合ってよくよく考えていかないといけない」と述べる。
というのも、そもそも「監視カメラやドライブレコーダー、スマートフォンの発達・普及で客観的証拠が従来よりも残りやすくなっている一方、供述が得にくくなっている」からだ。機器の発達・普及で証拠固めは容易になった一方、供述を得て事件の全容を解明することが難しくなっていると指摘する。
「仙台高検では、被疑者が黙秘をするケースが増え、参考人の協力を得られないケースが結構見られた。そうしたケースは東京では仙台よりもさらに多い。言うは易く、行うは難しだが、捜査に協力してもらえるようにいかに説得をしていくか、検察の捜査の意義をどうやって被疑者や参考人に理解してもらうかが課題だ」(稲田検事長)
共謀罪については、「どうやれば、ちゃんとやっていますと言えるのかが難しい。検察としてどう振る舞うかを反芻・勉強していく。できることはそういうことくらいしかない」(稲田検事長)。
東京地検と東京高検の2人の新トップは司法取引を効果的に運用し、共謀罪を適正に適用していくことができるだろうか。
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