「ナチュラルローソン」は、なぜ増えないのか 消費者の健康志向にジャストフィットだが…

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通常のコンビニは、大手メーカーが投入した新商品を店内にたくさん並べ、購入を促す。だが、ナチュラルローソンでは固定客が多いため、新商品ばかり並べると、顧客ニーズに反してしまうことがあるという。

「店舗によって何が売れ筋商品かを見極め、固定客を逃がさないような売り場を作らなくてはいけない。こうした点はナチュラルローソンのオペレーションにおける独特な点だ」。都内でナチュラルローソンを8店舗運営する加盟店オーナーの宇登裕紀氏はこう話す。

通常のローソンの「実験店」的な役割

こうした業態の特殊性ゆえ、どこにでも出店できるというわけではなさそうだ。ローソンは具体的な出店基準を明らかにしていないが、松永ナチュラルローソン支店長は「通常のローソンであれば商圏人数だけで出店できることもあるが、女性を主要なターゲットにしているだけに、その地域人口の女性構成比なども考慮して出店する必要がある」と明かす。

現在のナチュラルローソンは、通常のローソンの実験店的な位置づけになっている。まずナチュラルローソンで試験販売をし、売れ行きを見て、大量生産可能な商品はローソンで全国展開するというケースは少なくない。

店外のボードでも独自商品をアピール。通常のローソンとは違う店舗運営が必要になる(写真:ローソン)

ローソンは2013年に「マチの健康ステーション」を掲げ、通常のローソンでも健康に配慮した商品を投入してきた。

特に昨秋以降は、ナチュラルローソンのPB(自主企画商品)が通常のローソンに並ぶことが増え、現在では約90のナチュラルローソン商品が共通化されている。代表格は、何といっても健康チルド飲料の「グリーンスムージー」だろう。2015年5月に発売した同商品は、いまや全国のローソンで1秒に1本売れるほどの看板商品に育った。

商品の共通化が進めば、両業態の差異はますますなくなっていく。逆に差別化しようとすると、ナチュラルローソンは、単なるとんがった実験店となってしまう。出店が加速しないのは、そのあたりの事情が大きそうだ。

消費者の健康志向が今後も高まることは間違いない。しかし、それに応えるだけでは規模の拡大にはつながらない。消費が成熟化する中で、大手コンビニの抱えるジレンマの一つといえそうだ。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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