世界シェア計70%、3Dプリンタが開く未来図 注目の海外企業(2) 3Dシステムズ社、ストラタシス社

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3Dプリンタとは、コンピュータで作成した設計データを基に、樹脂や金属などの材料を少しずつ積層しながら固めていき、複雑な構造の立体物をダイレクトに一体として造形する装置である。金型を使わず、専用の工具を準備する必要もなく、特殊な職人の技術がなくとも、まるで印刷するような感覚で立体物を造形できるのだ。

インクに相当する材料の違い、材料の積層方法の違いによって、3Dプリンタにはいくつかの種類が存在する。溶かした樹脂を積み重ねる熱溶解方式、粉末を噴射するインクジェット方式、金属粉末を積層造形する方式などである。今のところ、樹脂を用いる3Dプリンタが主流になっている。

設計データに応じて多種多様なものを作るのに適しているが、造形するのに時間がかかるため同じものを大量に作るには適さない。つまり、多品種少量生産に適した装置なのだ。

1990年代に誕生、普及版の登場でステージが変わる

3Dプリンタは案外古くから作られており、1990年代前半に産業用に売り出されたのが最初である。販売価格は高く(円にして1台1億円も珍しくないという)、ユーザーは大企業が中心だ。試作とテスト、そして改良を繰り返して製品を作る場合に使われることが多かった。最終的な部品の製造に使われるだけでなく、たとえば、新製品開発のためのモデルやプレゼンテーション用の見本を作るのに活用されてきた。

2000年代に入ると、進化・改良が進んだ。材料の品質向上、造形物の精度向上、造形の複雑化などにより用途は多様化し、装置の使い勝手の改良と維持管理の簡便化が図られ、さらに販売価格は引き下げられた。こうした進化の背景には、コンピュータの性能の向上があったのは言うまでもない。ただ、現状でも数十分から数時間かかるという造形時間は、さらに短縮される必要があるだろう。

そして、2010年前後から、普及版の3Dプリンタが発売されるようになった。普及版は、小型のもので、価格も円にして100万円前後となり、小規模企業、新興企業、そして個人が使い始めた。さらに家電製品並みの価格のものが登場するとともに、個人向けの手軽な装置として脚光を浴びるに至っている。

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