証券マンが消えた「兜町」は生まれ変われるか 証券取引所の大家さんがついに再開発を始動
ビルの高層階はオフィスフロアとなり、低層階に個人投資家や企業が交流できるスペースが整備される予定だ。具体的には、3階に金融リテラシーなどを学べるような情報源を集約したライブラリーとラウンジを設置。4階には、これまで地区全体で会議室の数が不足していたことも踏まえ、500人規模のホールや、セミナールームなども用意する。株主総会やIR説明会、金融関連のセミナーを兜町で実施しやすくする狙いだ。
兜町は東証のおひざ元として古くから数多くの証券会社が本店を置くなど、金融の中心地として栄えてきた。永代通りを500メートルほど歩けば日本橋駅、さらにおよそ500メートル進むと東京駅に着き、再開発ラッシュが続くエリアにも程近い。
兜町が面する永代通りでは多くのビジネスマンが行き交うものの、大通りを一歩入れば人影が少なく、日本橋や東京駅周辺と比べると、都心でありながらやや寂れた印象が拭えない。
株の売買処理の自動化が転機に
かつての取引所では、立会場に各証券会社から派遣された「場立ち」が集い、身振り手振りで株の売買処理を行っていた。それが東証では1999年にコンピュータによる売買処理へ移行。日々東証で取引をしていた2000人もの「場立ち」はいなくなり、周辺で営業する飲食店などでは客が急減する事態に。さらに手数料が安いネット証券の普及に押され、兜町に事務所を構える中小証券会社の廃業も相次いだ。
日本証券業協会によると、会員である証券会社の数は2008年8月の325社をピークに減少傾向をたどり、現在は264社。証券会社の従業員数も、バブル期の1991年には16万6965人に達したが、直近は9万2101人にまで減少している。
場立ちが消え、中小証券会社ものれんを下ろす中、街は活気を失い、最近ではビジネス街でありながら、オフィスではなくコンパクトマンションが建つケースも増えている。こうした時代の流れの煽りを受けたのは、東証以外の証券取引所界隈の地域も同様だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら