地下鉄暑さ対策、昔は「トンネル冷房」だった 車内冷房をできなかった理由とは?

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トンネル内冷房の装置(写真:東京地下鉄)

しかし、駅やトンネル内の冷房設備がしだいに整うとともに、車両の省エネルギー化が進みトンネル内の温度上昇が抑えられるようになったことから、営団でも車両冷房導入の機運が高まった。その結果、1987年10月には全線の車両冷房化方針を決定。1988年には、日比谷線・東西線・千代田線・有楽町線・半蔵門線の各線で車両の冷房化を開始した。車両の冷房化は、新型車両の導入と既存車両の改造の双方で進められた。

一方、銀座線・丸ノ内線の冷房化は1990年開始とやや遅れた。銀座線には今年引退した01系が1983年から、丸ノ内線には現在走っている02系が1988年から投入されていたが、当時の最新鋭だったこれらの車両には、最初は冷房が設置されていなかった。両線はトンネルが狭く、薄型の冷房装置が必要だったためだ。1996年には営団地下鉄の車両、相互直通運転の車両ともども100%の冷房率となった。

車両冷房化が進むとともにトンネル冷房は必要性が低下し、1987年ごろから新設されなくなっていった。1998年にはトンネル冷房廃止の方針が決定され、2006年に丸ノ内線淡路町駅―大手町駅間を最後に廃止された。

服装も涼しくなっていく?

だが、鉄道の冷房化が進んだのはいいものの、通勤時の服装にはなかなか変化が訪れなかった。今でもなくなったわけではないが、夏でもスーツにネクタイ着用が基本という社会はなかなか変わらなかったのだ。

そんな中、2005年に環境省が打ち出したのが「クールビズ」だ。提唱者は当時の環境大臣で、現東京都知事である小池百合子氏である。クールビズは一定の広がりを見せ、夏期はノーネクタイや半袖シャツが受け入れられるようになってきた。さらに2011年の東日本大震災以降、電力不足の懸念から夏期の軽装がより求められるようになった。2012年には「スーパークールビズ」が提唱されるようになり、ノージャケットも徹底化されるようになった。

こういった夏期の軽装が浸透する中で、かつてのように凍えるほど冷房の強い電車は少なくなってきた。これは、電力の節約という点でもいいことだろう。現在、車内の冷房状況は運転台に設置されたモニターで各社の乗車効率や車内温度を車掌が確認し、管理できるようになっているという。

もうすぐ夏は終わる。今年の夏は雨が多かったものの、暑い日はやはり暑く、全体的な温暖化のトレンドは終わりを見せることはない。通勤時の車内は冷房が当たり前となり、かつてと比べれば快適になったが、年々暑さの増す中でエネルギー消費を抑えつつ夏を乗り切るには、ビジネスの場でも軽装への認知度がさらに増すことが重要だろう。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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