「人は誘惑に弱い」と知るイスラム教の不倫観

リビドーはコントロールできるのか

さて、今井絵理子参院議員と神戸市議の橋本健氏の不倫疑惑では、「一線は越えていない」というフレーズも巷間を賑わせていますが、イスラム教的にはどうなのでしょうか。結論から言いますと、限りなく「アウト」です。ただ、最終的な判断は神に委ねられているようです。ハディースでは、近親関係にない男女が密室に一緒にいることを禁じています。なぜかというと、シャイターン(サタン=悪魔)にそそのかされて男女関係のタブーを犯しかねないからです。

特に一緒に居た場所がラブホテルだったとすれば、ほぼ「クロ」と見なされますが、イスラム教では、そこで「一線は越えていない」という今井議員の主張にも正当性があるとみなします。イスラム教は、ジナの罪(通姦、不倫)を犯したかどうかは、4人の目撃者の証言や、当事者の告白、未婚女性の妊娠などで判断されます。冤罪(えんざい)を避けるための厳しい基準が設けられているのです。ただ、本人がウソをついたとしたら、最後の審判の際にジナの罪を犯した者は、地獄に突き落とされるということです。

イスラム教徒は教えをどう解釈するかに尽きる

このようにイスラム教では、男女は誘惑に弱いものであるとの前提で、多くの規定が存在しています。日本で相次ぐ不倫報道は、このような宗教的な縛りが希薄で個人のモラル次第という日本社会の世相を反映したものでしょう。

ただ、イスラム法の硬直的な解釈は、時代や現代の人権感覚にそぐわなくなっている面もあり、特に女性の側からの問題提起が増えています。男女関係に関する規定については、チュニジアのように一夫多妻制を法律で禁じたり、制限を設けたりする国が多いのが実情です。

最近もインドの最高裁判所が、男性が一方的に「離婚」と3回唱えるだけで離婚が成立するイスラム法の規定は憲法違反との裁定を下しました。男性が欲望を満たすために悪用しているというのも判断のひとつの根拠です。イスラム世界では、男女の遺産相続についても女性側から不平等だと異議申し立てが相次いでいます。

これに対して、エジプトにあるイスラム教スンニ派の権威機関アズハルは、「宗教的な文言に疑問の余地がなければ、解釈することは認められない」との声明を出して防戦しています。コーランの明確な文言についても、こうした論争が起きていることは、閉鎖的なイスラム世界が、変革への過渡期に差しかかりつつある現れとも考えられないでしょうか。

ここまで読んで、「との解釈もある」とか「との面もある」との表現が多いことに気づいたかもしれません。実は、ここにイスラム教を理解するヒントが隠されているのです。イスラム教というのは、コーランやムハンマドの教えをどう解釈するかということに尽きます。

中には、一言一句そのまま現代世界に適用すべきだという人もいますし、神の真意をその時代に合った形で探り当てるべきだという考えもあります。狭量なイスラム法の伝統的な解釈が依然幅を利かせているのも事実ですが、たとえばエジプトでは、イスラム法上の判断が分かれる「オルフィー婚(民法上は無効な慣習婚)」をするなど、自らの意思で男女関係を判断する人も増えているのです。

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