黒字鉄道にも災害復旧補助「法改正案」の中身 被災路線が赤字なら国の補助対象に
これまでは、たとえば、同じ東日本大震災で被災した三陸地方のローカル鉄道であっても、第三セクターの三陸鉄道には復旧のための補助金が交付され鉄道で復旧したが、JR東日本の路線である気仙沼線や大船渡線は交付対象とはならず、復旧・運営経費が低く抑えられるBRT(バス高速輸送システム)での復旧(費用はJR東日本の負担)となった。このような、「復興格差」の解消につながることが、この補助要件の緩和により期待される。
国からの補助率は、現行法と同じく復旧費用の4分の1以内。4分の1は地方自治体、2分の1は鉄道事業者の自己負担であることは変わらない。ただし、復旧後の鉄道の運営が公有民営方式となる場合は、例外として国の補助率が3分の1以内にまで引き上げられることには注目したい。
2011年の豪雨災害で会津川口―只見間の不通が続いている只見線は、今後、河川改修と並行して復旧工事を行い、福島県と沿線自治体が線路や駅などの設備を保有・管理。JR東日本が列車の運行、営業を行うことで両者合意している。このように「上下分離」を行い、インフラ部分(下)を自治体などが所有(公有)、営業(上)を従来の鉄道事業者が行う(民営)場合への、国の配慮である。
黒字会社でも厳しい復旧費負担
只見線の復旧費用は約81億円が見込まれている。負担割合は、JR東日本が3分の1、福島県と会津地方17市町村が3分の2ということに決まったが、このうちJR東日本が負担する部分に国庫からの補助金が充てられる見通しがついたことになる。改正案は、この只見線における合意を前例に、補助率の特例を定めたとも考えられる。
JR東日本の営業利益は約4663億円(2016年度)。これに対し、たとえば只見線の復旧に見込まれる費用、約81億円という数字は小さいようにも思えるが、約1億4300万円(同)にとどまる同線の年間旅客運輸収入や、復旧後に見込まれる不通区間の年間赤字見込額約2億8000万円、只見線だけではなく東日本大震災の被災路線の復旧費負担などもほかにあることを考え合わせると、「拠出する」とはすぐには言えない負担だろう。
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