黒字鉄道にも災害復旧補助「法改正案」の中身 被災路線が赤字なら国の補助対象に

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もし、山田線宮古―釜石間にも改正法案に基づく補助金が適用されたとしたら、どうであっただろうか。地元自治体は復旧費用の一部負担に応じる代わりに運行はJR東日本で続けられ、運賃水準は震災前のとおり維持されたかもしれない。現在、宮古駅構内で建設が進められている三陸鉄道の新車両基地も不要となる。震災前、同区間用のJR東日本の車両は既存の盛岡車両センターを基地にしていた。このあたり、どちらがよかったかは、地元にとっても極めて難しい判断であろう。

山田線の場合、岩手県も含む地元自治体とJR東日本との粘り強い交渉の成果ともいえるが、その代わり時間はかかり、被災から運転再開まで約8年を要することとなった。この間、路線バスにより大きな混乱もなく輸送は代替され、主な利用者層である高校生であっても、鉄道を知らずに3年間を過ごす世代が増えた。震災後の人口減少も相まって、復旧後の鉄道経営への懸念も生じている。

復興へ速やかな国の支援を

鉄道軌道整備法改正は、鉄道からの利用者の逸走を少しでも防ぐための、迅速な鉄道復旧への後押しとしても期待する。

只見線は厳しい冬季でも安定した輸送を提供できる公共交通機関として、地元が存続を決めた(筆者撮影)

現在、只見線のほか、災害による長期不通区間は、JR北海道の根室本線東鹿越―新得間、同日高本線鵡川―様似間、JR東日本の山田線上米内―川内間、常磐線の竜田―浪江間、JR九州の豊肥本線肥後大津―阿蘇間、久大本線光岡―日田間、日田彦山線添田―夜明間、および南阿蘇鉄道の立野―中松間と数え上げられる。

自己負担による復旧を行うかどうかという鉄道事業者側の意向、および鉄道を必要とするか否かという地元の意向のすり合わせ次第ではあるが、被災地への救援、復興への一助となるインフラ整備という観点からも、速やかな国の支援による早期運転再開の決定が望まれる。

土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

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つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

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