「新幹線」正規料金安いが割引で世界に負ける

世界の高速列車の「料金」を徹底比較

時間帯やシーズンなどの都合で、すべての列車が最安値で売られるわけでもないが、2~3週間前に買えばおおむね100ポンド(約1万4100円)前後と同じような距離の新幹線きっぷと近い価格で手に入る。休暇や観光で行く人には「早めに予定すれば安い」と早期購入を促し、急な予定で動くビジネスマンからは高く取る、という鉄道運営会社の戦略が透けて見える。ちなみにビジネス目的でも、早めにアポイントを取ってできるだけ安く買おう、という人も少なくない。

欧州における高速列車の価格設定は、列車の時期や出発曜日、時間帯などで需要を割り出す「イールドコントロール」という方法で細かく決められている。この手法は、主に世界的なホテルチェーンや各航空会社(ことに格安航空会社)が用いているものだ。

欧州では鉄道とLCC、バス間の競争が厳しい

たとえば、ホテルや航空会社はたくさん集客したければ、割引率を上げて価格を下げることで目的は達成できる。客単価が下がる弊害があるものの、需要が少ない時期には有効な手段と言えよう。一方、多客時には価格を下げなくてもそれなりの集客は可能だ。つまりイールドコントロールは、需給バランスを見ながら適切な値立てを行うことで、年間を通じて利益を最大化するための手段だ。

高速列車は飛行機と競合する一方、国内線を補完する役割もある(パリ・シャルルドゴール空港駅で、筆者撮影)

欧州の鉄道事業者は高速列車の座席を売りさばくための手段として、イールドコントロールを積極的に取り入れている。冬季のウィークデー早朝便は人気がないので安く売られる一方、バカンス客が多い夏の週末便では最低設定額を上げてもなお需要があるから強気の商売に出る、といった具合だ。これに加え、変更時手数料の高い安いなどの条件で細かく価格を変えている鉄道会社もある。なお、速度の速い遅い、停車駅の多い少ないで価格の格差はなく、その区間の最速列車でも早く手配することで格安に買うことができる。

「なぜそんなに細かいことを考えてきっぷを売る必要があるのか?」という疑問が出てくるかもしれない。できるだけ価格を下げるためのモチベーションが生まれるのはほかならぬ「競争の原理」が存在するからだ。例えばロンドン―パリ間では、ユーロスターは格安航空(LCC)を含む空の便と競合するほか、そして安く行きたい人には高速バス、さらには自家用車というチョイスもある。つまり「鉄道はウチしかない」といったあぐらをかいたような料金を付けていては、「じゃあ飛行機で行こう」とか、「次回は車で」といったように利用客が列車そのものを避けることさえあり得るわけだ。

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