「るるぶ」経営のレストランは何が新しいのか 編集者ならではの「こだわり」がある
るるぶ情報版刊行以来、30年余にわたり、さまざまな地域に編集者が何度も足を運んできた。その結果、情報の蓄積量は膨大なものになっている。またその過程で、飲食店や生産者など食にかかわるプレーヤーとの関係を作り上げてきたことが、今回のるるぶキッチンの実現に大きく寄与している。
日本各地のこだわり食材を使った定番メニューのほかに、期間ごとに特定の地域を「特集」として取り上げ、旬の食材を生かしたオリジナルメニューを提供する。提供期間は1特集につき、1カ月程度だという。レシピはそのたびに開発することになる。
「シェフの手間や食材の調達のうえでは、これまでの飲食店のセオリーと比べて当然、効率は悪いわけですが、これが店のコンセプトであり、個性だと考えています」(青木氏)
これまでに特集で取り上げた地域は、復興支援の意味も込めたた岩手県宮古市からスタートし、8月24日から9月13日までは、福岡県北九州市、鹿児島県南九州市と連携し、「どっちに行きたい?北九州市・南九州市」を特集する。
注目の「日本ワイン」をグラスから頼める
同店のもうひとつの特徴が、日本ワインを取りそろえていることだ。日本ワインとは日本で生産されたブドウを100%使い、国内で製造されたものを指す。「国産ワイン」という場合は、海外から輸入したブドウなどを使っている。この日本ワインが、最近注目を浴びている。ご当地グルメブームや、日本ブランド人気の高まりを背景に、近年、国内に若手のワイナリーが増えてきたことも理由のひとつとなっている。このように、アルコールに関しても、ひとつひとつ「ストーリー」があり、話題づくりになるようなものを選んで置いているのだという。
「日本産のブドウだけを使った“日本ワイン”にこだわっています。全国各地から、個性的な日本ワインを集めました。グラスで注文できるので、ぜひいろいろ味わっていただきたいと思っています」(青木氏)
そろえられているワインは12種類。一部ボトルでの提供だが、多くはグラスで500円台から注文できる。またワインのほかにも、ビールや焼酎、日本酒、ノンアルコールなど、日本産にこだわったドリンクが並ぶ。
店内には、「食材や地域のストーリーを知ってもらえるように」という思いを込めた、編集者ならではのこだわりが随所にちりばめられている。まず目につくのが、壁のコルクボードに描かれた日本地図。オレンジや緑のシールは、提供している食材や飲み物が生産されている場所を、矢印マークは特集の地域を示すのだという。もう一方の壁には、特集で取り上げている地域の情報を掲載した『るるぶ情報版』や、お土産品が並ぶ。地域ならではの素材の缶詰や調味料など、メニューに使われているものもあり、購入も可能だ。
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