米国株の本格的下落が始まったかもしれない 警鐘は「相場の天井」で鳴ってはくれないもの

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バルセロナでのテロがあったが、今後も欧州諸国でテロが頻発するリスクを否定はできない(日本時間の19日土曜日には、フィンランドで複数の通行人が死亡。モロッコ国籍の18歳の容疑者などが取りざたされている)。ただ、これまでも欧州主要国では、テロ事件が生じてきたわけで、テロ事件そのものは起こるべきではないし、人命が失われた忌まわしい出来事だが、それだけで欧州経済の屋台骨が揺らぎ、欧州株価やユーロ相場などが、下落基調に陥るというわけではないだろう。

「鐘は相場の天井では鳴らない」という格言

だが、短期的には米国株や米ドル相場のリバウンドや、それを受けて日本株の戻りを予想するものの、日米の株価は、既に「天井圏」を形成したと懸念している。具体的には、NYダウ工業株指数は、2万2000ドルの大台を一時的に奪回することがあっても、その上の価格、具体的には直近の高値(日中のザラ場ベースでは8日火曜日の2万2179ドル、終値ベースでは7日月曜日の2万2118ドルを超えるかどうかは不透明だ。

一方の日経平均株価も、2万円台を短期的に回復する見込みを捨て去る必要はないだろうが、それでも6月20日火曜日の高値(ザラ場では2万0318円、終値では2万0230円)を超えることは難しくなってきたと考える。目先の戻りで日米株価はピークアウトした後、概ね年末にかけての下落基調となろう。

読者の皆さんは、「馬渕さんは、日米株価とも、直近の高値をわずかでも抜けるかそれとも抜けないのか、何月何日が株価の天井になるのか、正確にわからないのですか」と感じられるかもしれない。

米ウォール街の古い格言では「鐘は天井では鳴らない」というものがあるという。相場の天井を示すサインは多くあるが、ぴったり天井のタイミングでサインが表れるわけではなく、たとえば株価が下落に転じる可能性が示されたのち、さらに株価が短期間上昇し、それから大きく下落基調に入る、ということは良く起こる、という意味だ。

そうした警戒サインのうち、米国株についての一部は、当コラムでもご紹介してきた。たとえば7月24日月曜日付の「風船のような米国株が割れるのはいつなのか?」では、物色の行き詰まり感が強まっていることを示唆した。市場では、VIX指数(いわゆる恐怖指数)が上昇していることや、米ジャンク債(低格付け債)利回りと米国債利回りの差が開いてきた(つまり、ジャンク債が相対的に売られている)ことを、指摘する声も聞こえる。また金価格の持ち直しや仮想通貨(ビットコインなど)の価格上昇を、株式などからの資金逃避だと考える向きも多いようだ。

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