小池都知事は「ウルトラ右翼の独裁者」なのか 「日本ファーストの会」に見えるその国家観

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もっとも憲法96条改正に意欲を示す安倍首相の目的は、憲法9条の改正だ。ところが小池知事の場合は、憲法改正の幅はもっと広い。たとえば2001年4月26日の衆議院憲法調査会で以下のように述べている。

「むしろ私は、一度、真っさらな段階から、我が国はこうあるべきだ、こういう方向を目指すのだといった形で書き直した方が早いのじゃないか、そういうスタンスを持っている一人でございます」

これはあたかも「革命」を求めているかのような表現にも読める。では現行憲法は改正すべき論を持つとして、小池知事が目指す行政とはどういうものなのか。

知事就任から1年経ち、その真相も見え始めている。たとえば「情報公開」についてだ。小池知事は昨年9月28日の所信表明で「都議会は密室ではない」と述べ、それまで自民党が牛耳っていた都政を批判した。今年の都議選でも情報公開を1丁目1番地と位置づけ、都議選で配布した“都民ファーストPRESS”には「『黒塗り』の公文書を改め、徹底的に情報公開します」と宣言した。

すでに前出の衆議院憲法調査会でも、小池知事はこのような発言もしている。

「憲法の中にどうしても本来は組み入れるべきではないかと思っているのが、情報公開でございます。(中略)今の政治と行政のさまざまな問題、これは多くの部分で、情報公開によってかなり前進する部分がある。そしてまた、透明性を持つ部分がある。そして、国民が政治、行政に対しての信頼を寄せる……」

実は「自分ファースト」?

ところが都議選前に小池知事が判断した「豊洲移転・築地再開発方針」に関する議事録が残されていないことが判明。これをスクープした毎日新聞の記者が8月10日の会見で小池知事に質問したところ、小池知事は「政策判断だ」と答えるのみで、文書として残さなかった理由については述べなかった。

行政事実を記載した文書を黒塗りにするのは国民の知る権利を侵害するものだが、それは黒塗りを剝がせば足りる。しかし文書化しなければ、その事実が永遠に知らされることはない。ましてや小池知事は“ブラックボックス”だった築地移転問題に火を付け、知事に当選したという経緯がある。それなのに「側近との密室政治」を行おうとするのなら、それこそ「自分ファースト」との批判は逃れられない。

以上を踏まえて考えれば、「日本(にっぽん)ファーストの会」の名称はいかにも皮肉な様相を含んでいるのではないか。“若狭新党”がいまいち盛り上がらないのは、それゆえかもしれない。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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