「高齢化」している自衛隊で本当に大丈夫か 北朝鮮への脅威で予算は増え続けているが

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日本の防衛予算は、長期的な戦略に基づきつつ、防衛力を整備する中期的な計画を立て、各年度に必要な経費を計上する形で組まれている。おおむね10年程度の期間を念頭に置いた、外交政策と防衛政策に関する長期的な戦略は「国家安全保障戦略」だ。現在の国家安全保障戦略は2013年12月に策定され、国際協調主義に基づく積極的平和主義をうたっている。

これを踏まえて防衛力のあり方と保有すべき防衛力の水準を規定する「防衛計画の大綱」(略称、防衛大綱)が策定される。現在の防衛大綱は2013年12月に策定され、弾道ミサイル防衛としてイージス艦を策定前の6隻から8隻に増やすことや、航空自衛隊の作戦用航空機を策定前の約340機から約360機に増やすことを盛り込む一方、陸上自衛隊の戦車を約700両から約300両に減らすなどして、実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備することを明示している。

防衛大綱に合わせて5年間の経費の総額と主要装備の整備数量を明示する「中期防衛力整備計画」(略称、中期防)が策定される。同時期に策定された現在の中期防は、2014~2018年度の自衛隊に関する事業や所要経費などを定めている。これには弾道ミサイル防衛として、能力向上型のPAC3(地対空誘導弾)を2個群配備することも盛り込まれた。このように、防衛予算は国家安全保障戦略から、防衛大綱、中期防とブレークダウンし、各年度予算を組むという流れとなっている。

イージス・アショア導入を発表した意味

8月3日の内閣改造で就任した小野寺五典防衛大臣は、防衛大綱の見直しに着手するよう、安倍首相から指示されたことを明らかにした。その理由として、厳しさを増すわが国の安全保障環境を踏まえ、防衛力を強化し、国民の安全確保に万全を期すことを挙げた。ただ、現在の防衛大綱はおおむね10年程度の期間を念頭に置いているものの、2013年末に策定してまだ5年しか経っていない。目下、各省で、2018年度予算の概算要求を取りまとめている最中である。とはいえ、2019年度以降の防衛予算については、新たに中期防を策定しなければならず、そのタイミングで変化する安全保障環境に対応すべく防衛大綱も見直すものとみられる。

北朝鮮のグアム攻撃計画が明らかになった最中、8月17日にワシントンで開かれた日米外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)に合わせ、防衛省は「イージス・アショア」を導入する方針を発表した。イージス・アショアとは、ミサイル防衛システムのイージス艦と同様の能力がある、地上配備型の迎撃ミサイルシステムだ。ちなみにイージスとは、ギリシャ神話の神ゼウスが与えた盾の名に由来する。もちろん、これは現在の中期防に盛り込まれていないから、2018年度中に配備することを想定していない。

図らずも、2018年度予算の概算要求を固める時期と、北朝鮮が弾道ミサイルの発射技術を進展させている時期が重なったが、2019年度以降の次期中期防に盛り込むことを想定しての方針の発表だろう。防衛省内で、イージス・アショアと、韓国でも配備を予定しているTHAAD(高高度迎撃ミサイルシステム)の費用対効果を比較考量したようだが、総額でいくらかけて整備するかを確定できないため、まずはいくらかけるかを調査することから始める。

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