北朝鮮危機の最大リスクはトランプ大統領だ 金正恩が予期せぬ行動に出ることはないが…
金正恩がミサイル開発に突き進む姿勢はますます明らかになっている。英国ロンドンに本部を置く国際戦略研究所(IISS)が行った過去2回の発射実験の動画分析によると、北朝鮮は現在、1990年代以降ロシアでは使用されていない旧ソ連製のロケットエンジンを基盤とするエンジンを保有していると見られる。
北朝鮮がいかにしてこうした技術を、予想されたよりはるかに早く獲得できたのかは不明だ。最も可能性が高い出所はロシアやウクライナの管理が行き届いていない軍の備蓄か、不法なネットワークであろうと、IISSは指摘する。しかし重要なことは、こうした技術が特に洗練されたものではないという点だ。もし北朝鮮がまだこの技術を正しく使えていないとするならば、北朝鮮、あるいは、北朝鮮を支援している疑いのある旧ソ連の科学者が程なくしてそれを修正するであろう。
一方的に予期せぬ行動に出ることはない
ロシアは言うまでもなく、少なくとも1950年代以降、米本土に甚大な被害を与えられる能力を有している。戦後、米露両国がドイツ中の研究所に押し寄せ、技術とその研究開発に携わる専門家を獲得し、さらにその技術の精度を高めていった。また中国も1960年代以後、米国を攻撃する能力を備えている。
この2国が米政府に外交、軍事オプションの見直しを迫ったわけだ。しかし、大まかに言えば、ロシアにしろ、中国にしろ、超大国の責任ある「仲間」だと考えられている。恐怖と疑心暗鬼の冷戦期でさえ、「相互確証破壊」の恐怖が状況を制御できるという一般的な考え方が多くの場合に存在した。
金正恩にこの考え方が当てはまるかはわからない。しかし、彼が一方的に、予期せぬ形でやみくもに破壊的な行動を起こすことはないだろう。なぜなら、そうすることによって自身の体制が破壊されることを知っているからだ。金正恩が核兵器開発を進める理由は、現体制を維持することにあるのだ。
ただし、現在の体制が維持できなくなるようなことが起これば、問題が生じるだろう。今のところ差し迫った崩壊の危機に直面しているわけではないが、それが生じる危険性は高まり続けている。
金正恩の希望は、北朝鮮の核兵器の能力を確実に高めることで、世界の国々に彼の力を認めさせることにあるように見える。しかし、これとは逆のことが起こる可能性もある。今月、北朝鮮による一連のミサイル発射実験の成功を受け、国連安全保障理事会の制裁決議が全会一致で採択された。このため、今後北朝鮮の経済状況が悪化することは明白だ。中国も不満を抱えており、石炭や鉄など一部の北朝鮮製品の輸入を禁止し、北朝鮮政府への圧力を一層強めている。