欧州産「生ハム」が日本で一段と身近になる日 イタリアが求めるのは量より質の理解
パルマ市内のスーパーには、丸々と太ったパルマハムの原木が鈴なりに吊るされている。日本では、一般の消費者が気軽に手に入れることができるのは、せいぜい薄くスライスしてパック詰めされたものだが、この街では、多くの一般家庭でも生ハムの原木をスライスする機械を持っているケースが多いという。確かに、近郊でバルサミコ酢を造る家族の自宅でも、生ハムのスライサーを当たり前のように使っていた。なんでも、切りたての食感と風味は、パック詰めのものとはまるで異なるという。
美味しいものをとびきり美味しい方法で食べる、これが、伝統を重んじて作られたパルマハムへの地元民たちの愛ある食べ方なのだろう。
さらに、保存料や添加物を使わず、塩のみの伝統的製法で作られるパルマハムは、胃腸の弱いお年寄りから乳児の離乳食まで、あらゆるシーンで頻繁に登場する国民的食べ物であると言える。
パルマハム協会&販売主 パルマハムにまつわる懸念
パルマハムは、パルマ市街から少し離れたランギラーノという地区で主に作られており、古くからの伝統的な製法を守り続ける家族経営の作り手が密集している。その150にも及ぶ生産農家を束ねるパルマハム協会に、今回のEPA大枠合意にかける期待を尋ねた。
「(EPA大枠合意は)まさに日本市場での成長につながる成果です。パルマハムの日本への輸出は、1996年の輸出開始以降、ほぼ右肩上がりに伸びています。今後関税の廃止によって、パルマハムの日本市場での競争価値がさらに高まると信じています」
現在、日本はEU域外においてアメリカに次いで第2の重要な輸出先であり、2016年度は計72万キロのパルマハムが輸出されているという。アジアでは最大のマーケットであり、期待も大きい。しかし、パルマハムの認知度がまだ日本で高いとは言えないなか、どのような地域でどんな製法で作られたものが本物のパルマハムなのか、まずは正しく理解してもらうことが第一歩だという。
第1弾、第2弾で触れたチーズやワインと同様、パルマハムも今回、地理的表示保護制度(GI)の一環で、EU側が名称をきちんと守るよう要求している品のひとつだ。EUではすでに知られているように、遠く離れた日本でも、パルマハムの定義がきちんと伝わり、本物を味わってもらえればというのが産地の願いだ。
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