「トミーカイラZZ」EV版を作った男の真実 ゼロからの無謀な挑戦を成し遂げた

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当時は、社長の小間がビジネスプランを説明し、私がエンジニアとして技術的な裏付けを説明して、出資を募る。その資金で、EV開発を進めていく。という状況で、全社員5人の小さなベンチャ―企業は、どうにかこうにか息をしていました。光が見えてきたのは、開発に着手してから2年後。量産モデルの初期デザイン(モック)を発表し、さらに翌年6月、妻との約束通り3年(と少し過ぎてしまいましたが)、量産車として国交省の国内認証を取得し、量産の道がようやく見えてきました。さらに改良を重ね、ついに専用ファクトリー(小阪金属工業)にて2015年10月、スポーツEV「トミーカイラZZ」は、国内初の量産化へと漕ぎ着けました。

「失敗」こそが、新しい価値観を生み出していく

――「失敗」を渇望した結果、まったく新しい製品開発に成功しました。

藤墳氏:ゼロからのEV開発では、モーターやバッテリー、フレーム、シャシーなどを搭載したプラットフォームはもちろん、外観や車体、部品やパーツに至るまですべてを新しく作り出す必要がありました。GLMはこうした既存の「枠」がまったくなかったからこそ失敗ができました。そうした失敗こそが新たな価値観を生み出せる原動力になる。それが私たちの最大の強みだと思っています。今も、失敗を重ねながら新たに「GLM G4」という、おそらくZZのさらに100倍ほど難しい(笑)、EVの開発に着手しています。

――GLMの挑戦と、藤墳さんの新たな夢が重なります。

藤墳氏:GLMの企業理念は、「自由を生み出す場所」です。目指しているのは、商品の普及だけではなく、私たちの中身である「テクノロジー」のショーケース。商品として「クルマ」を売るのではなく、技術を売るメーカーでありたい。その中で、私のエンジニアとして現場に携わり続けたいという夢も、一緒に託したいと思っています。

技術本部長という肩書きですが、やはりワクワクする現場は離れられそうにありません。部門長としての責任はまっとうしつつも、プレイヤーとして現場に居続けたい。今のところ「面白いものづくりに携わり続けたい」という想い以外に、明確なビジョンは持ち合わせてはいませんが、当面の目標は「GLM G4」の完成です。そして、その先は自分でもまだ分かりません。車なのか、まったく新しい別のものなのか。GLMが今後どんな失敗をして、また新たな成功を生み出すか。自分自身も楽しみながら「新しくてワクワクするもの」を、エンジニアの現場魂で皆様にお届けしたいと思います。

(インタビュー・文/沖中幸太郎)

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アルファポリスビジネス編集部

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