アップル新本社「宇宙船」は非常識の塊だった 敷地内には果樹園・牧草地・池まである
市長のサビタ・ヴァイディアナサンは、アップル新本社への訪問について「驚いた。衝撃的だった」と話す。「1000席のシアターは地階にあり、屋根はカーボンファイバーだった。屋根はデュバイでつくられて、輸送されたのちにここで組み立てられた。(アップルパークが)ここにできてうれしいし、それを自慢できるのもいい」。
こうした外からの眺めも、その多くがじきに見られなくなる。アップルパークでは、空いている土地に9000本の木が植えられる予定だからだ。その代わり、一般の人はビジターセンターを訪問することができる。そこにはカフェやアップルストア、屋上には展望台などが設けられる予定だ。
「ビジターセンターは独立したガラスの建物で、オリーブの原生林の中に建つ予定だ」と、アップルの不動産・開発担当バイスプレジデントのダン・ウィゼンハントは言う。
アップルの地元対策
ただし、こうした変化をすべての人が歓迎しているわけではない。877世帯が住むバードランド地区の住民は、特に不満を訴えている。彼らの苦情は、工事用のトラックが早朝に大きな音をたてて走る、突然道路が封鎖される、見苦しい緑色のシートがかけられる、工事によって道路に穴が開き、そのために車がパンクするといったものだ。
シェリ・ニールセンは、自分の車が工事でホコリだらけになったとき、アップルに連絡をした。するとアップルは、洗車サービス券を送ってくれたという。
アップルはすべての苦情に対応しようと努力していると、ウィゼンハントは話す。そして、「問題が深刻な場合は、私が直接現場に行って、何が起こっているかを確認する」。
設計段階のうちにアップルは地域で110回以上集会を開き、意見を聞いたという。バードランドでは2012年後半と2013年前半に会が開かれ、その後3年間の建設期間中に何が起こるか、情報が提供された。アップルは地域向けの手紙を5回発行し、2万6000世帯に送った。
不動産は毎年20%値上がり
地域の不動産価格も地元では心配の種となっている。テクノロジー業界が拡大するに伴い、サニーベールやクパチーノでは、ほかのシリコンバレーの街と同様に、不動産価格の上昇が続いている。不動産業者や住民たちによると、アップルの計画が発表されてから不動産価格は本当に高くなり始めたという。
寝室3部屋にバスルームが2つの130平方メートルのランチ(牧場)様式の住宅は、2011年には75万ドル(約8300万円)だったが、いまでは価格が倍になっている。地元の不動産業者によると、アップルがヒューレット・パッカード本社の跡地に移転すると発表してから、不動産価格は毎年15%から20%上昇しており、今日では売り手の希望価格を20%から25%上回る価格を買い手が提示するという。
アップルの従業員の中には、すでにバードランドに引っ越してきた人もいる。住宅の元の所有者たちは、不動産を売却して、もっと静かな地域に移っていった。残っている人々も、1万2000人のアップル従業員が毎日通勤してくるようになれば、日々の生活は変わっていくだろうと考え始めている。近隣の住民は交通量の拡大を恐れ、アップル社内の駐車スペースが足りずに、自分の家の前に従業員が車を駐車することも予想している。
ウィゼンハントは、これからもアップルは住民の懸念に対応し続けていくと言う。「これから何が起こるかを伝えれば、彼らが抱えている不安も大いに減る」。
それでもウィゼンハントは、「全員を満足させることはできない」と認識してもいる。
(執筆:Kathy Chin Leong記者、翻訳:東方雅美)
© 2017 New York Times News Service
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