新規事業にチャレンジした社員の失敗を責めず、チャレンジしたことで他の社員にはない経験を積めたことをむしろプラス評価する人事制度も必要です。ただ、これらを会社レベルで変えていこうというのは大変。今回のプロジェクトリーダーの田中課長が個人レベルでどうにかできることではありません。
はしごを外されないために組織の中でするべきこと
とはいえ、企業人ならはしごを外されないように注意をしながら、新しいことへのチャレンジを進めることも不可能ではありません。必要なのは緻密な根回しです。
新しい取り組みの最終目標は多くの場合「新たな売り上げの獲得」ですが、「売り上げ」は最も遠く読みづらい目標数値なので、その手前で他にさまざまなKPI(Key Performance Indicator)を設定しておけば、事態は違ったでしょう。
たとえ、さまざまな事情で計画どおりに売り上げが上がらなかったとしても、事前に設定したKPI(例:認知率、接触率、リーチ率、店舗数、リピート率 etc.)の数値目標に達していれば、その後に対策を講じてリカバーするチャンスが与えられたかもしれません。
筆者が企業人として社内で新規事業の推進部署にいた頃は、社内広報の担当部署と懇意にするようにしていました。そして、意識的に、新規事業の検討プロセスや事業化後の進捗を前述のKPIを使って可能なかぎり社内にオープンに情報発信するように努めました。
これは社内に支援者や理解者を増やし、この事業を積極的に推進していく空気を醸成していくことを目的にしたものです。時には、役員にインタビューをとってもらい、「この新規事業に懸ける意気込み」を役員の言葉として社内報等に掲載してもらったこともありました。ここまで言質を取られると、役員もそう簡単にははしごを外すわけにいきません。
革命軍がクーデターを起こした際にはまずメディアを占拠しますが、会社の中でイノベーションを起こそうというときにも社内メディアとの連携は有効。後ろ盾を作っておくことが、はしごを外されないことにつながります。担当役員以外の他の役員、さまざまな部門の協力を取り付けておくという手もあります。
そして最も有効なはしごを外されないための工夫は、顧客を味方につけることです。新規事業を支持してくれた顧客の声ほど社内で強い武器になるものはありません。慎重派・反対派の社内への説得材料に使えます。新しい取り組みを推進しようとする企業人の最大の後ろ盾は、それを支持してくれる顧客なのです。
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