過去の事例に則れば、(1)は地政学リスクだが、今年はまず北朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル)発射懸念だ。米国メディアを主体に警戒報道が多く流れている。日本にとっては、その結果としてのリスク回避の円高進行が一番悪いシナリオだろう。一方の中東では、カタールの国交断絶は長期化の様相となっており、何かの拍子で政治的なバランスが崩れる可能性には注意したい。それでもOPECの減産合意とシェール革命(WTIなら1バレル=30ドル程度で採算)により、かつてのような原油高騰は想定し難いが、原油高とドル安が連動すれば、相場の混乱が大きくなる。
(2)と(7)は新興国発金融不安の世界的な伝播事例。中国の今年上期の経済は堅調に推移しており、秋に5年に1度の共産党大会を控え、人民元の安定、資本流出規制にしっかり取り組むとみられる。今夏の不安は例年よりはリスクが低そうだ。
米国は、9月に再投資政策の縮小決定へ
(5)はサブプライム問題の本格化の起点であった。そこから10年たった今も、インフレ率2%安定に確信がもてない状況が続いている。住宅市場は2012年には底入れしたが、石橋を叩いて渡るイエレン議長のもと、FRB(米国連邦準備制度理事会)が利上げ開始を決定できたのは2015年12月。2回目は時間を置いて2016年12月。そこからペースを速めて2017年3月、6月と4回の利上げを実施し、FF金利の誘導目標も1%を超えた。
7月26日のFOMC(米国連邦公開市場委員会)声明文では、「比較的早期に」再投資政策の縮小に取り組むことを明記。足元で物価は伸び悩んでいるものの、9月には再投資政策の縮小決定(10月開始)が見込まれる。
米国CPIの弱さは「携帯電話サービスと処方薬の価格低下」による一時的なものとされるが、前年比では来春まで残る項目だ。それ以外に気になる弱さは、新車販売不振の影響を受けた中古車と、振れを伴うが衣料品価格の下落が止まらないことだ。それでも3カ月前比年率(限界的な変化)を見ると、マイナス幅は縮小方向にある。一部サービスと一部耐久財(自動車関連)の下落傾向だけなら、2%近辺で安定するとの物価見通しは変える必要はない。利上げは、当初予定の年内あと1回を視野に入れつつ、物価動向次第だろう。現時点で12月利上げの可能性は残ると筆者はみている。
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