今年も8月下旬、毎年恒例の夏の風物詩、カンザスシティ連銀主催のジャクソンホール会合(中央銀行、学者等による経済シンポジウム)が24~26日に開催される。今年のテーマは「ダイナミックなグローバル経済を促進する」。主要国は緩やかな景気回復のもと、物価上昇圧力の鈍さが共通課題であり、回復局面で金融政策の正常化を進めるべきとの意見が主流となるのかどうか、注目されよう。なおドラギECB(欧州中央銀行)総裁の3年ぶりの出席は発表されたが、一部に健康不安説もあるイエレンFRB議長の出欠が公式発表されていない点は、やや気掛かりだ。
為替の動きは、ECBが出口戦略を模索しつつあることから、ユーロドルが主戦場となっている。7月20日のECB理事会後のドラギ総裁会見で、量的緩和の縮小について「議論は秋に行う」「秋の決定では、まず何よりもインフレを注視する」と述べた。出口について早く語り過ぎると、意図せざる通貨高や金利上昇を招き、実体経済にも悪影響を及ぼしかねない。ドラギ総裁は6月27日のタカ派発言(発言場所にちなみ「シントラの一撃」とも)による市場の混乱収拾のため、慎重な言い回しで自ら幕引きをして、独10年国債の金利は低下したが、ユーロ高はまだ止まっていない。このままユーロ高が継続すれば、9月発表の物価見通し(6月時の想定が1ユーロ=1.08ドル)が下方修正される可能性が高まる。ECBの政策変更を見極めるまで、ユーロは比較的堅調に推移するとみている。
国内では日銀は無風、安倍政権の動向に注目
一方の国内要因では、(3)はわずか7ヵ月後に量的緩和に追い込まれた、日銀の苦い経験。(4)は2006年7月のゼロ金利解除後、CPI基準改定により物価上昇率がゼロ近傍に戻ってしまい、日銀の利上げ判断が早かったとの批判が強まった。(6)は2010、2011年と連続して円高の夏となり、日銀が追加緩和に追い込まれる状況が繰り返された。白川前総裁時代の話だ。
2013年4月からの黒田体制で初めて、一昨年は(7)人民元切り下げの影響で円高進行の夏(125円台から116円台へ)となったが、今よりは円安水準だった。その点、今夏の日銀は物価目標2%に向けて、粘り強い緩和姿勢を示しており、新たな審議委員が就任したばかりで無風だ。
その代わり、8月3日には安倍内閣改造が予定され、その後は支持率回復を目指す安倍政権の政策運営に注目が集まるだろう。取り組み姿勢によっては、海外勢に嫌気され、日本株のポジションを動かす時がくるかもしれない。
以上より、今年の8月相場は、9月のECB理事会とFOMCを控えて米欧物価指標に一時的に反応しても、材料待ちの時間帯が長くなるように思われる。勝負の9~10月に向けて、体調管理を万全にしたい。8月相場が大きく動くとすれば、スケジュールにはない突然の地政学リスクの高まりや、想定外の日米政局に振り回されるケースではないだろうか。一部の大物投資家は既に、ボラテリティの高まりを予想して、ポジションを仕込み始めている。
テールリスクの顕在化するタイミングは予想し難いが、夏枯れ相場よりも、収益チャンスの到来といえるだろう。
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