ベンツ、新型「Sクラス」の権威 1000万円超の最高級車が織りなす“異次元”の世界

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内装も豪華そのもの

このほか、夜間走行の際に前方道路の脇を歩いている歩行者の姿をとらえて、スポットライトを当てる機能や最大で43.5度まで傾くリアシート、ヒーターやマッサージ機能付きのシートなどを装備。今年投入した新型Eクラスでも一部導入した、カメラとレーダーなどにより、先方車との車間距離を最適に維持するだけでなく、車線のカーブに沿ってハンドル操作を補助する「レーダーセーフティパッケージ」なども採用した。

アルミをふんだんに使い、100kg軽量化

基本的な部分の改良にも余念がない。車体には、鉄よりも軽くてねじれに強いアルミニウムを約5割採用。従来モデルに比べてなんと100キログラムの軽量化を果たした。今後、2年のうちに、電気自動車(EV)のようにもHVのようにも乗れるプラグインハイブリッド車(PHV)や、ディーゼルエンジンとモーターを組み合わせる「世界初のディーゼルHV」(上野社長)も追加する予定だ。

このSクラス。いったい日本でどれぐらい売れるのか。旧型の初年度販売は約1カ月で2000台程度だったという。「8~9割がSクラスを定期的に乗り換える固定客」(上野社長)。そして、23日昼間に、新車発表会が開かれたにっぽん丸は、同日夜に出航。メルセデス・ベンツはそのディナー付きのナイトクルーズに、約400人のSクラスユーザーを招待した。

にっぽん丸の船内にあるプール。「本当にあるんだ」というのが感想

これらのユーザーは、おそらく超富裕層でベンツの熱心なファンでもある。新車発表と同時に成約に至る可能性が高いようだ。1台当たりざっと平均1500万円と見積もると、合計60億円の売り上げが一晩で動くようなものだ。「フラッグシップカーのSクラスを披露するうえでは、特別な催しをしたいと考え、今回、日本一のクルーザーを借りられるチャンスを得た。(メディアやユーザーに)特別な体験をしてもらうため、にっぽん丸での発表会を企画した」と上野社長は明かす。

ここまで来ると、ケチをつけるのが難しい。現時点では庶民には“異次元”の世界でしかないが、長い目で見れば無関係でもない。車の最先端技術はまず高級車に先行導入され、徐々に量販車へと広がっていく流れがあるからだ。自動車メーカーが先進技術に挑める背景には、超富裕層のすさまじい購買力がある。世界を見渡しても最高級車といえる、メルセデス・ベンツ「Sクラス」の権威を感じた1日だった。

武政 秀明
たけまさ ひであき / Hideaki Takemasa

1998年関西大学総合情報学部卒。国産大手自動車系ディーラーのセールスマン、新聞記者を経て、2005年東洋経済新報社に入社。2010年4月から東洋経済オンライン編集部。東洋経済オンライン副編集長を経て、2018年12月から東洋経済オンライン編集長。2020年5月、過去最高となる月間3億0457万PVを記録。2020年10月から2023年3月まで東洋経済オンライン編集部長。趣味はランニング。フルマラソンのベストタイムは2時間49分11秒(2012年勝田全国マラソン)。

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