日本勢の勝機は?英高速鉄道「HS2」の全貌 世界の注目度は高く、中国も食指伸ばす
HS2に「どのメーカーの車両が入るか」というトピックは大きな関心事のひとつだが、その一方で「どこの会社が運行事業者となるか?」という点にも注目すべきだろう。
英運輸省は、2026年に開通するHS2のロンドン―バーミンガム間の営業権付与に当たり、「ウエストコーストパートナーシップ」の名で、並行する在来線である西海岸本線(ロンドン―グラスゴー間)の運営も併せて担わせる方針を固めている。同省は営業権獲得を目指して応札した企業体について、すでに最終選考を通じて3つのコンソーシアムに絞り込んだ。
1つは、西海岸本線の営業権を持っている英ステージコーチとヴァージン・トレインズが、TGVの運行に実績を持つフランス国鉄(SNCF)とともに結成した合弁会社だ。2つ目はグレートウエスタン本線の運行を担っているファースト・グループが、イタリアで高速列車「フレッチャロッサ」を運行しているトレニタリアと組んだ合弁会社となっている。
中国勢も名乗り上げる
そして3つ目のいすに納まったのは、香港鉄路有限公司(MTR)と中国・広深鉄路公司の合弁会社だ。この2社は香港と広東省の広州などを結ぶ「粤港直通車」を共同で運行しているほか、広深鉄路は中国国内区間で高速列車の運行を行っているとはいえ、欧州での実績はない。もし彼らが運行事業者に決まれば、導入される車両も中国製になるのかもしれない。
ちなみに日立にとって追い風になりそうな運行事業者は、ファーストとトレニタリアの合弁だろうか。ファーストは、IEPで日立製「クラス800」をグレートウエスタン本線で走らせることが決まっているし、トレニタリアは日立がイタリアで生産を引き継いだフレッチャロッサ「ETR1000」の運行を行っている事業者だからである。とはいえ、運輸省での営業権付与はさまざまな条件をもとに審査される。新たに決まるコンソーシアムが運行を受け持つのは2019年4月だ。鉄道路線の営業権は数年ごとに契約が更新され、車両の耐用年数より大幅に短いが「営業権を保持している会社が車両の納入先を選ぶ」という習慣もあるため、「どのコンソーシアムがウエストコーストパートナーシップの営業権を獲るか」は大きな関心事となるに違いない。
日本で新幹線が走り始めてから50年以上が経つ。高速車両の運行では世界的に見ても先行している日本だが、技術の海外輸出では2007年に開業した台湾高速鉄道以来、ずいぶんと間が空いてしまった。幸いにも、インドで初となる高速鉄道(ムンバイ―アーメダバード間)は日本の新幹線方式が採用されることが決まったが、鉄道業界での世界的な注目度という点ではやはりHS2のほうが大きなインパクトを与えるだろう。
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