日本とEUのEPAは、米英への誘い水となるか 優先順位が低かったEPAがまとまったワケ

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難航気味だった日EUEPA交渉が大枠合意に至った背景には、農産加工品や関税以外の分野での、日本側の譲歩をEUが利益と受け止めたことがあるのだろう。

それ以上に大きな力として働いたと思われるのが米国のトランプ政権の通商政策への懸念だ。日本にとっては、トランプ大統領がTPPからの離脱を決めたことで、TPPは「米国を除く11カ国」という当初の想定よりも遙かに小さな規模になり、相対的にEUとのEPAの重要性が増した。EUと米国のTTIPの協議もトランプ政権の発足後、宙に浮いている。

英国のEU離脱もEPA推進の圧力として働いた。EUは、英国が離脱により手放す権利の大きさを示し、英国に続く加盟国のEU離脱に歯止めをかけたいと思っている。そのためにはEUの中核である域内関税ゼロ、域外関税を共通化する「関税同盟」と、財・サービス・資本・人の4つの移動の自由を原則とする「単一市場」の価値を高める必要がある。

EUに逆風が吹く中、2トップの業績に

EU側は日本とのEPAについて2019年初の発効を目指すと伝えられている。2019年秋には、EUを代表する権限が与えられている二人のトップ、欧州委員会のユンケル委員長とEU首脳会議のトゥスク常任議長(EU大統領)が任期を終える。日本とのEPAを現体制の業績として残したいという思いは、強いだろう。

日本にとってもEPAの早期発効は望ましい。米国抜きで発効を目指すことになったTPPへの推進力となる。2019年3月に英国のEU離脱を控えていることとも関わる。7月16日から20日まで英国とEUの2回目の離脱協議が行われたが、英国では閣内も党内も、世論も割れていて、離脱がどのような形をとるのか定まらないままだ。だが、離脱前にEUとのEPAが発効していれば、離脱後の英国とのFTA交渉の基準となり得る。

英国にとって財・サービス・資本・人の移動が自由な単一市場に残るという「ソフトな離脱」は、人の移動を切り離せないため難しい。だが、関税同盟に残るという意味での「ソフトな離脱」の選択であれば、理解を得やすい面はある。関税同盟を英国とEUの新たなFTAが発効するまでの「移行期間の枠組み」として活用するといった可能性も考えられる。英国でビジネスを展開する日本企業にも、その度合いは不透明ながら、一定の恩恵は及ぶと期待される。

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