孫正義・柳井正も憧れたレイ・クロックの真実

映画「ファウンダー」が描くマクドナルド物語

そこに折よく自分を売り込んできた人物が、会計士のハリー・ソナボーンである。会社の帳票類を精査したソナボーンは、マクドナルドのビジネスを不動産業に転換するようレイ・クロックに進言する。

「ハンバーガーの売り上げの1.4%では帝国を築けない。土地を取得して加盟店に貸しなさい。そうすれば事業が安定してフランチャイジーを支配できる」(ソナボーン)。

すべてを変えた不動産ビジネスへの進出

生前のレイ・クロック(写真:Everett Collection/アフロ)

レイ・クロックは「フランチャイズ・リアルティ社」という不動産会社を設立する。

不動産ビジネスに乗り出したことで、マクドナルド兄弟との力関係が逆転する。ハンバーガーを売るビジネスでは兄弟と交わした契約に縛られるが、店舗を増やすのはレイ・クロックの自由だからだ。

レイ・クロックは兄弟に宣戦布告する。「別会社は君たちの権利外だ。店内で起こることには干渉できるが、店の外と上下では、権限はドアと床までだ」。

兄弟との全面対決はここで決着を見る。最終的に、レイ・クロックは270万ドルで、マクドナルド兄弟からハンバーガービジネスを買い取ることになる。このディールは、見方によっては、際どい“略奪行為”である。

おわかりいただけたと思うが、このストーリーは、世界最大規模のファストフードチェーンを起こした創業者の美しい成功談ではない。想像を絶する“えげつない”やり方でビジネスの世界を生き抜いた、1人の男の根性物語である。

日本人の歴代経営者で、レイ・クロックの生き方に強く影響を受けたベンチャー経営者が少なくとも3人いる。ひとりは、レイ・クロックの友人で、日本マクドナルドを創業した藤田田氏だ。

2004年に逝去した藤田氏は、日本のフードビジネスの基礎を作ることに貢献した。レイ・クロックの遺伝子を受け継いだ藤田氏の元部下たちが、現在でも経営トップとして日本のフードビジネスを支えている。

2人目は、ソフトバンクグループの会長兼社長・孫正義氏である。米国留学に際して、孫氏は藤田氏から資金的な援助を得ている。帰国後は、ITビジネスのグローバル展開で積極的にM&Aを仕掛けている。いい悪いは別にして、ゼロから事業を作るのではなく、既存の有望なビジネスを見つけて買収し、その後に短期間で事業を大きくするやり方は、実にレイ・クロックの流儀そのものである。

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