孫正義・柳井正も憧れたレイ・クロックの真実 映画「ファウンダー」が描くマクドナルド物語

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3人目は、孫氏とともに、レイ・クロックの自伝『成功はゴミ箱の中に』(プレジデント社)に解説文を寄稿しているファーストリテイリングの柳井正・会長兼社長である。

社名の「ファーストリテイリング」(ファストフードのように速い小売業)は、レイ・クロックが完成させたファストフードに由来する。1998年にユニクロ原宿店で始まった、高品質ながら低価格、絞り込んだ品ぞろえは、マクドナルドのビジネスモデルの衣料品版である。

先人たちが、ハンバーガーショップの「ゴミ箱」の中から何を持ち帰ったのかはわかった。それでは、この物語から私たちが学ぶべき教訓は何なのだろうか。

キーワードは"根気"

米イリノイ州にはレイ・クロックが開いたマクドナルドの1号店が現存している(2013年、編集部撮影)

場所はレイ・クロックの故郷、イリノイ州デスプレーンズ。社交クラブに集まった友人たちに、ハンバーガーチェーンの壮大なアイデアを語るレイ・クロック。しかし、友人たちはバカにしてまともに相手にしてくれない。

というのも、過去に収納テーブルやペーパーカップの事業で、知人や銀行から資金を集めてうまくいかなかった前科があったからだ。そこは、妻のエセルが友人たちを説得して、フランチャイズビジネスへの資金提供にこぎ着ける。また、マクドナルド兄弟との数々の衝突場面では、成功へのあくなき執念で乗り切っていく。

圧巻は、マクドナルド兄弟と商権を争っている渦中で取った、レイ・クロックのしたたかな振る舞いである。兄のマックが過労で倒れて病院に入院する。そこに花束を抱えたレイ・クロックが「白紙の小切手」を持って現れる。「彼には勝てない。追い払えない」(ディック)。勝負はついていた。

その後のストーリーは、読者がよく知っているグローバルに成長した4万店のハンバーガービジネスである。エンドロールが流れる前に、ジョン・リー・ハンコック監督が、主演男優のマイケル・キートン(レイ・クロック役)に言わせる長いせりふが決まっている。

「こう思っているね。52歳のミルクシェイクマシンのセールスマンが、50州に1600店舗のチェーンを作り、海外5カ国で7億ドル近く売り上げた理由は? 答えは1つ。“根気”だ。世の中に“根気”に勝るものはない。“才能”があっても、成功できない者はごろごろしている。“天才”も報われないのが世の常だ。“学歴”も賢さを伴うとは限らない。“根気”と“信念”があれば無敵だ」

事実、レイ・クロックは普通の人間が引退を考える52歳を過ぎてから、驚くべき根気と信念で夢を実現した。

ちなみに、マクドナルドはこの映画を支援せず、とのスタンスを取っている。それはそうだろう。“創業者”の神話を覆すストーリーを映画化したわけなのだから。

小川 孔輔 法政大学 経営大学院教授

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おがわ こうすけ / Kosuke Ogawa

法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科教授。1951年秋田県生まれ。東京大学経済学部卒業。法政大学経営学部教授を経て、現職。日本マーケティング・サイエンス学会代表理事。JCSI(日本版顧客満足度指数)開発主査。主な著書に『しまむらとヤオコー』(小学館)、『マーケティング入門』『ブランド戦略の実際<第二版>』(日本経済新聞出版社)などがある。

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