マツダ、最重要の米国で挑む「ブランド改革」 20年ぶりの日本人トップ、販売店評価も一新

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どれだけ「商品価値」や「マツダブランド」を訴求し、「顧客満足度」を高めているか。顧客へのアンケート結果に加え、店舗の内外装や設備、ホームページのデザインも評価する。奨励金全体の半分が新基準によって決まっている。

ただ、台数を売らなくていいとは一言も言っていない。顧客満足度を高めれば、再びマツダに買い替える顧客は増える。再購入率が5~6割になれば、ビジネスが楽になる。メンテナンスなどアフターサービスの売り上げ増にも繋がり、販売店の収益は改善される。

スバルに学び、販売網を再構築

――販売店もかなり入れ替えている。

毛籠勝弘(もろ・まさひろ)/1960年生まれ。1983年マツダ入社、2008年執行役員 グローバル販売統括補佐、2013年常務執行役員 営業領域統括、2016年1月にマツダモーターオブアメリカ社長兼CEO(現職)、同年4月専務執行役員(同)(撮影:今井康一)

米国に着任した当初、1店舗平均の年間販売台数は450~470台程度だった。これでは規模が小さ過ぎ、全体の1/4の上位150店舗しか持続可能性がない。

販売網ではスバルを随分研究してきた。マツダとスバルの販売店舗数は600店強とほぼ同じだが、スバルは1店舗あたり年間平均でうちの倍以上の1050台を売る。スバルは2009年に経営破綻したGM(ゼネラルモーターズ)から優良販売店を取り込み、さらに米国市場に合わせた商品の投入が効いた。

昨年、われわれは立地が悪い販売店の閉鎖、移転を行い、空白地帯に出店を進めた。一方で商品価値重視の考え方に同意できない販売店とは契約を解除した。2016年1月には全米に635店舗あったが、62店舗を閉鎖し、新たに27店舗を採用した。


――白や黒、木目を基調とした内外装が特徴の「新世代店舗」の展開を進めている。

既に27店舗が導入した。今後2~3年で100店舗が投資に合意済みで、実施済みを含めると全体の2割になる。改装費用は概ね販売会社持ちだが、投資をかけてもマツダのビジネスは儲かるとオーナーは判断している。

新店舗になるとお客さんも値引きを要求しにくい。従業員のモチベーションも上がる。そのお店の顧客満足度も高まるという良い循環が生まれる。


――北米統括会社では昨年、大規模な早期退職を実施した。

元々790名いたが、55歳以上の102名に辞めていただいた。米国には定年退職という概念がない。私があのリストラをしないと、3年以内に社員の3分の1以上がマネジメントポジションを占めてしまう。能力ある若い社員たちがどんどん活躍できる柔軟性を取り戻す必要があった。

また、販売改革を実現するには、販売現場に近いところに人材を振り向ける必要があった。販売店へのトレーニングを一層強化していくうえで、全米に5か所あるリージョンオフィスの人員増強も急務だ。人員配置の最適化はあと2年ぐらいで完了したい。

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