夫婦のやり取りは異国企業との取引と同じだ 互いの好きな領域に踏み込みすぎると危ない
前編:人気作家夫婦が交互連載で離婚を考えたワケ
家では互いの仕事の話をしないほうがいい
円城塔(以下、円城):僕はこの人(田辺さん)が小説家以外で何の仕事をしているか、知らないまま結婚したんですよ。産業翻訳? 通訳? らしいんだけど。実はいまだにいくら説明されてもよくわからない。
――共働き夫婦、特におふたりのように同業の場合、お互いの仕事についてどこまで知っておくべきなんでしょうか。われわれのいる出版業界では同業者の結婚が多い反面、離婚も少なくないのですが(笑)。
円城:同業でも、仕事と夫婦関係とは切り分けたほうがいい。SNSもつなげないほうがいいですね。
田辺 青蛙(以下、田辺):そうですね。
円城:うちの場合、お互い相手の文章は読まないですし、もし読むにしてもこっそり読む。もちろん感想は言わない。夫婦でジャンルがずれていたのは幸いでした。もし同じジャンルだったら、ちょっと危なかったかも。
田辺:友達や知り合いが私の書いたものをボロッカスに言ってたら、ちょっと複雑な気持ちになりますからね。あくまで読者としての意見だとわかっていても、つらい。それが家族だったらなおさら嫌だし、とはいえ身内だから褒めなきゃってのも変な話。
――しかし、小説家やある種の編集者のように、何をしていても1日中仕事とは完全に切り離せないような生活を送っている場合、家庭での話題はどうしても仕事のことになってしまいがちでは……。
円城:いえ、うちは仕事にぜんぜん関係ない会話ばっかりですよ。この人は基本的に下ネタとBLの話しかしない。僕も、ある程度までは付き合うけど、1日じゅうBLの話は無理(笑)。
田辺:連載で課題図書に入れようとしたんですけどね。『世界一周ホモのたび』(サムソン高橋、熊田プウ助・著)とか。世界中のハッテン場がリポートされているという……。