秋以降、ユーロ圏では重要な政治イベントが続く。まずは9月に予定されているドイツの連邦議会選挙だ。
今年1月に社会民主党(SPD)の党首にマルティン・シュルツ氏が選出されてから、同党の支持率は急上昇している。シュルツ氏は「公正な社会」というスローガンの下、格差是正を訴えてきた。シュルツ氏はプロのサッカー選手を目指して失敗し高校を中退、アルコール依存症だった時期もあったそうだ。しかしその後、出版社への就職とともに依存症から回復。小さな書店を営みながら地道に政治活動を行った。地元の市長を務めた後は欧州議会へと活動の拠点を移し、2012年以降は欧州議会の議長を務めた。新鮮さに加えてスピーチのうまさにも定評があり、シュルツ氏の下、SPDはメルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)と並ぶほどまでに一時は支持率を伸ばした。
ただ、SPDの政策は、これまで連立を組んできたCDUと実際のところは大差なく、その人気も今のところはCDUを超えるほどではない。加えて、移民反対、EU(欧州連合)離脱を掲げる右派政党「ドイツのための選択肢」も、一時注目を集めたもののこのところ支持率は低下。現メルケル政権下でドイツ経済が目覚ましく回復したことが、CDUへの強い追い風になっており、今のところCDUが優勢な状況だ。
万一、総選挙で現在2位のSPDが大勝し、首相がシュルツ氏に交代したとしても、ドイツが親EUであることに変わりはない。したがって、なお流動的ではあるものの、9月に選挙が波乱要因となってユーロが急落するリスクは低いといえる。
イタリアは波乱要因となっても一時的
リスクが高いといえばイタリアだろう。イタリアでは来年5月までに総選挙が実施される予定だが、今年の秋に前倒しされる可能性が浮上している。問題は、ドイツと異なりイタリアではEUに対して国民の多くが悲観的であることだ。欧州委員会の依頼によりユーロバロメーターが実施している世論調査では、「EUの将来に対して楽観的か? 悲観的か?」の問いに対し、「楽観的」との回答率が低い順に並べると、ギリシャ(30%)、キプロス(39%)、英国(40%)、フランス(41%)、次いでイタリア(42%)となっている。
すでにデフォルトを経験しているギリシャやキプロスはさておき、このうち英国は昨年の国民投票でEU離脱を決定した。下から4位のフランスは、今年の大統領選で極右政党「国民戦線」が躍進。独立系のマクロン氏に敗北したとはいえ、党首のルペン氏は支持率を高めた。そのフランスに次いでイタリア国民はEUに対して懐疑的なうえ、新興野党の「5つ星運動」に対する国民の支持率は与党民主党をしのぐ勢いだ。
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