こうした中、ECBの金融政策スタンスにも変化が見られる。ECBは6月8日の理事会で金融政策を据え置いたが、声明文の「緩和バイアス」を変更した。
具体的には、前回(3月)までの「政策金利が長期にわたって現在の水準ないしそれ以下の水準に維持されると予想する」との文言を「政策金利が長期にわたって現在の水準に維持されると予想する」に変えた。つまり、「それ以下の水準」という、追加緩和の可能性を示す文言を削除したのである。
さらに6月27日には、ドラギ総裁が「数年前よりもインフレ率の目標への回帰について自信を持てる」「デフレ圧力はリフレ圧力に取って代わられた」などと発言。将来のインフレ見通しに対して自信を示した。
米国トランプ政権への牽制も
これらに加えて注目したいのは、ドイツの閣僚による為替に関する発言だ。メルケル首相は5月22日、ベルリンでの学校訪問の際、「ユーロは弱すぎる。ECBの政策が原因だ。これによってドイツ製品が相対的に安くなっている。したがって、ドイツ製品はよく売れている。ではどうしたらよいかといえば、われわれにできるのは国内の投資を増やすことだ」などと語った。
似たようなことを、ショイブレ財務相も今年2月4日に発言している。「ユーロ相場は、厳密に言えばドイツ経済の競争力から見て低すぎる。ECBのドラギ総裁が拡張的金融政策に乗り出した際、私はドイツの貿易黒字を押し上げると総裁に言った」。
これに先立つ1月31日、米国家通商会議(NTC)のナバロ代表は、「過小評価が著しいユーロを利用してドイツは有利な立場を得ている」との見解を示していた。4月に米財務省が議会に提出した為替報告書でも、ドイツの対米経常黒字に対する強い懸念が示されたうえ、ユーロは実質実効レートで2000年以降の平均に対して10%も割安になっていると指摘している。
振り返ればこの頃からECBに対して量的緩和縮小を求める動きが強まっていたのかもしれない。ドイツ要人の間ではもともと量的緩和の継続に対して懐疑的な見方が根強いこともある。こうした変化を受けて、ユーロは今年大幅に上昇しているが、問題はこのトレンドが今後も続き、2015年夏以降の長期下落トレンドチャネルの上限を突破できるかどうかだ。
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