JR東日本が「360キロ新幹線」に着手する理由 3度目の挑戦で、国の規制を打ち破れるか
ところが、今年5月29日に行われた決算説明会の席上、半ばルーチン化していた記者の時速360キロメートル運転に関する質問に対して、深澤祐二副社長はこう返答した。
「北海道新幹線の札幌延伸までには、スピードアップや環境対策を講じた車両の導入が必要だ。現在は試験車両について具体的に中身を詰めている段階」
今までの消極的な回答から一転、現実性を帯びた発言に変わった。つまり、7月4日の発表は決して突然飛び出したものではなく、5月には方向性が見えていたといってよい。では、2月から5月までの間にJR東日本に何らかの変化があったのだろうか。
JR東日本の広報部は「劇的な変化は起きていない。単なるコメントのニュアンスの違い」と説明する。確かにそうかもしれない。しかし、この間にJR東日本の内部や取り巻く環境にいくつかの変化が起きている。
四季島や新型山手線が営業運転を開始
たとえば今年5月には豪華列車「トランスイート四季島」や新型山手線E235系の量産車両の営業運転が始まった。大きな節目を無事に終え、いよいよ次世代新幹線の開発を打ち出す段階に来たという面はあるだろう。
海外展開も見逃せない。クアラルンプールとシンガポールを結ぶ高速鉄道案件では、日本と受注を競う中国がそれまで注力してきた高速鉄道駅開発案件から手を引いたことが5月3日に明らかになり、相対的に日本の存在感が高まった。新型車両の開発を打ち出すことで、E5系だけではない新幹線の技術力の高さを広く世界に示すという側面もあるだろう。
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