JR東日本が「360キロ新幹線」に着手する理由

3度目の挑戦で、国の規制を打ち破れるか

JR東日本が新幹線用の試験車両を開発するのはこれが3度目。最初は1992年の「STAR21」。軽量化と高速化を目標に開発され、最高時速425キロメートルを達成した。

2度目は2005年に登場した「FASTECH(ファステック)360」。名前に360がついていることからもわかるとおり、単に高い速度を狙うのではなく、時速360キロメートルでの営業運転を目指して開発された。つまり、快適性や環境性能の向上も開発テーマに入っている。

新幹線専用の試験車両と新在(新幹線と在来線)直通の試験車両の2編成が製造され、その成果はそれぞれ、2009年登場のE5系、2010年登場の「E6系」に受け継がれている。だが、ファステックは高速走行する際の快適性や騒音などに課題が残り、E5系とE6系の営業最高速度は時速320キロメートルにとどまっている。

ただ、JR東日本は時速360キロメートルの夢をあきらめていなかった。2012年策定の中期経営計画「グループ経営構想V(ファイブ)」に「新幹線の時速360キロメートルでの営業運転の実現に向けた挑戦」という一文が盛り込まれたのだ。

「360キロメートル」の優先順位は低かった

とはいえ、具体性については疑問符がついた。中期計画は鉄道だけでも災害対策、ホームドア整備、観光列車開発、海外進出など盛りだくさん。品川新駅開発、さらには子育て支援といった鉄道以外の事業計画も多岐にわたる。

JR東日本は中期計画の中から特に力を入れる事項を「今後の重点取り組み事項」として毎年発表していた。その中には「羽田空港アクセス線構想」など新たに加わった取り組みもある。一方で、「時速360キロメートル運転」という文言はいつまで経っても出てこなかった。

発表された試験車両のイメージ。先頭車両の形状は2タイプある(写真:JR東日本)

「時速360キロメートル運転への挑戦はどうなったのか」。決算に関する取材の都度、JR東日本に確認しているが、答えはいつも「開発はしている。ただ今後の重点取り組み事項への記載には優先順位がある」というものだった。

文字どおりに受け止めれば、時速360キロメートルの優先度は低いということだ。今年2月には冨田哲郎社長にも聞いてみたが、返ってきた答えは次のようなものだった。

「時速360キロメートルへの最高速度引き上げは、挑戦すべき目標として技術開発を進めている。しかし騒音や振動に関する厳しい基準があり、クリアするのは容易ではない。時速360キロメートルで運転できる列車を目指すことで、結果的に時速300~320キロメートルでの運転がより安全で快適になるということでしょうか」。このコメントから積極的な意気込みは感じられなかった。

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