中国「三峡ダム」が直面している巨大な危機 最悪の場合には上海の都市機能が麻痺する
6月24日、中国・四川省で大規模な山崩れが発生した。中国メディアによれば、住宅62戸が土砂に埋まり、120人以上が生き埋めになったという。山崩れの現場は、四川大地震と同じ場所であり、ここ数日、大雨が降りつづいて地盤が緩んでいたことが原因だとされる。だが原因はそれほど単純なものではないだろう。
2008年5月に発生した四川大地震はマグニチュード7.9を記録し、甚大な被害をもたらした。震源地近くでは地表に7メートルの段差が現れ、破壊力は阪神・淡路大震災の約30倍であった。
専門家は、四川盆地の北西の端にかかる約300キロにわたる龍門山断層帯の一部がずれたために起きたと分析し、これによって地質変動が起こり、龍門山断層帯は新たな活動期に入ったと指摘している。今後、さらに大規模な地震が発生する可能性が高いのである。
四川盆地はもともと標高5000メートル級の山々がつらなるチベット高原から急勾配で下った場所に位置する標高500メートル程度の盆地で、ユーラシア・プレートと揚子江プレートの境界線の上にあり、大小さまざまな断層帯が複雑に入り組む地震の多発地帯である。
それに加えて、最近の中国の研究では、地震発生の原因のひとつは「三峡ダム」の巨大な水圧ではないかとの指摘がある。ダムの貯水池にためた水の重圧と、地面から地下に沁みこんだ水が断層に達することで、断層がずれやすくなったという分析である。
建設中から数々の難題、天気や地震にまで悪影響
三峡ダムは、中国政府が「百年の大計」として鳴り物入りで建設した世界最大のダムである。16年の歳月を費やして、四川省重慶市から湖北省宜昌市にいたる長江の中流域の中でも、とくに水流が激しい「三峡」と呼ばれる場所に建設された。竣工は2009年だ。
ダムは70万キロワットの発電機32台を擁し、総発電量2250万キロワットを誇り、当初の計画では、湖北、河南、湖南、上海、広東など主要な大都市に電力が供給され、全中国の年間消費エネルギーの1割を供給でき、慢性的な電力不足の解消に役立つはずだった。