安倍政権とトランプ政権は「民主主義」を潰す その権威主義的手法は驚くほど似ている
自民党内に至ってはなおさらである。集団的自衛権行使を可能にする憲法解釈の変更、さらには憲法そのものの改正問題など、これまでの自民党の政策を大きく変更する場面でも、党内で安倍首相の方針に異論を差し挟む声はほとんど聞かれない。野党については何をかいわんやで、政治的な対抗者としての存在感すらない。
相互監視の緊張感が消え、無関心となり、悪循環に
自発的か受動的かは別にして、さまざまな個人や組織による安倍首相への権威主義的「服従」が生み出す弊害は計り知れない。民主主義的政治体制における多元性が生み出すべき相互監視の緊張感が消えつつあるのだ。その結果、行政の公平性、公正性に多くの国民が疑念を抱き、それが国政に対する信頼性を傷つけ、政治に対する不信感を増幅させる。国民の政治への無関心に拍車がかかり、さらに腐敗を助長する悪循環に陥りかねない。
長期政権となった中曽根康弘内閣で長く官房長官を務めた後藤田正晴氏は、長官時代、「権力が健全に機能し国民の信頼を維持するためには、健全な批判勢力が不可欠だ。そのためには批判勢力もしっかりしていなければならない。正当な批判や問題提起があってこそ、権力はうまく動く。そのことを為政者は忘れてはならない」と語ってくれたことがある。
後藤田氏は官房長官の立場にありながら、しばしば中曽根首相に注文をつけていた。イラン・イラク戦争終結時に海上自衛隊の掃海艇をペルシャ湾に派遣する問題が浮上した。中曽根首相は積極的だったが、後藤田氏は「閣議で署名しない」と強く反対し、首相を思いとどまらせたことがある。強面(こわもて)の政治家という印象が強いが、権力行使についてつねに謙虚な政治家だった。いまの政界に後藤田氏のような人はいない。それも民主主義の危機である。
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