安倍政権とトランプ政権は「民主主義」を潰す その権威主義的手法は驚くほど似ている
1つ目は、「国の制度や政府機関を政治化し、政府に批判的な勢力を抑え込んでいく」。裁判所や検察、情報機関、税務当局、規制当局などの国家組織の政治的独立が侵されると、「政府の不正行為を隠すことができるし、政府に反対する勢力を抑え込む力強いツールとして利用できる」というのだ。
2つ目は「市民社会の重要な一部を機能不全に追い込む」という手法だ。対象は主要メディアや企業リーダー、さらには宗教指導者も含まれる。為政者は彼らを取り込み骨抜きにしようとするのである。そして、「友好的なメディアには特権的アクセスが、お気に入りの企業リーダーにはうまみの多い利権や政府契約が与えられる」と指摘している。一方で、為政者の意向に従わない者は「情報当局の入念な捜査の対象にされるか、スキャンダルをでっち上げられる」というのだ。
3つ目は、「選挙で選ばれた独裁者が憲法改正、選挙区そのほかの制度の見直しを通じて、ライバルが自分と競争できないよう、政治ゲームのルールを書き換える」という例を示している。
3人の筆者はいずれもハーバード大学など米国の大学の研究者であり、日本研究の専門家ではない。にもかかわらず、これらの例示に安倍政権に通じるものが多いことに驚く。
議員、官僚、メディアに「服従」を求めている
人事権を使った安倍内閣の官僚統制強化、加計学園問題を封じ込めようという官僚機構の秘密主義的対応と首相官邸の強引な国会運営、内部告発した前文部科学事務次官への首相官邸の陰湿な対応、安倍内閣支持と批判で極端に二極分化したメディア状況と一部メディアに対する安倍首相の積極的な情報提供など、一つひとつを具体的に説明するまでもない。トランプ政権を分析したこの論考は、安倍内閣についてのものかと見まごうほど該当している。
国家権力はある程度多元的に構成され、複数の権力主体が相互にチェック・監視し合うことで行政の公平性、公正性が担保される仕組みとなっている。それが民主的政治体制を維持、機能させるための要でもある。ところが、監視する主体となるべき組織が政治化され、為政者の都合のいいように動くようになると、不正は追及されることがなくなる。
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