ニトリはなぜ「都心店」出店を加速させるのか 新宿・池袋に続き、大型店を渋谷に開業

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ハチ公口から徒歩6分の好立地にある(記者撮影)

ニトリはここにきて都心店の出店を加速している。2015年4月に「プランタン銀座」(現「マロニエゲート銀座2」)に出店したのを皮切りに、昨年12月に新宿高島屋タイムズスクエア、今年3月には東武百貨店池袋店に出店。今回の渋谷店は山手線沿線として8店目になる。

なぜニトリは都心進出を加速するのか。ニトリの国内の店舗数は443店(5月20日時点)、すでに47都道府県すべてに進出を果たしている。その中で1店あたり人口から見て、最も出店余地のあるのは首都圏だ。さらに都心部ほど、ニトリのように家具や生活雑貨を低価格で品ぞろえする業態は少ない。

都心部では電車で来店し、家具など大型商品を購入した場合には自宅への配送を希望する顧客が多い。そこでニトリは店頭の在庫を極力絞り、売り場面積を確保。大型商品については原則、自社の物流センターから直接配送するようにした。

4倍近い売り場効率で高い賃料を吸収

その結果、都心店は売り場効率が郊外店に比べて高い。たとえば新宿店の家具の売り場面積は、23区北部の赤羽店の約4分の1程度にもかかわらず、売上高はほぼ同じだという。つまり、売り場効率は約4倍。これにより都心部であっても高い賃料を吸収し、多店舗展開が可能になる。

会見する似鳥会長兼CEO(右)と、シダックスの志太会長兼社長(記者撮影)

渋谷に大型店を出すことで新宿店の売り上げが減ることも考えられるが、似鳥会長は「東京の人口は多いから自社競合があってもいい。今でも新宿は週8万人訪れ、対応にてんやわんやだ。渋谷(の開業)によって店舗の混雑が少しでも緩和されて、逆にいいじゃないか」とさらりとかわす。

店舗開発を担当する須藤文弘専務は「10年以上前から新宿・池袋・渋谷に出店する構想はあった。この2年間で(都心部に)進出しただけに過ぎない。圧倒的に人が集まる山手線沿線には出店余地は大きい。具体的にはいえないが、現在交渉中の案件もある」と語る。

ニトリの都心攻略は今後も続きそうだ。

菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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