現場にいない人事部が社員の才能を飼い殺す 「ほぼ日」と「カヤック」、ユニーク人事の裏側
篠田:糸井がよく組織と人を熱帯魚と水槽に例えて、「魚を飼うことは水を飼うこと」と言っています。たとえば、その魚が病気ですとか、どうも調子がよくないときに、その魚に何か薬を塗ろうといってもなかなか塗れない。それよりも、周りの環境を整えていくことで、自然に全体がよくなることを考える。全体の生態系をマネージする意識が大切だという話なのですが、そういう視点で人事や組織の仕事を私が見ています。
横石:柴田さんは人事という肩書ですが、カヤックの人事は幅が広そうなイメージがあります。
柴田:僕は入社が2011年なんですけど、最初に言われたのは「面白い採用を考えろ」でした。カヤックの理念は「つくる人を増やす」なんですが、僕たちはつくる人というのを、自分で主体的に動くとか、何か自分の人生を主体的に動かしたほうが面白い、というふうにとらえています。最近では、代表の柳澤(大輔CEO)が「社員だけでなく、株主にもつくる株主になってほしい」と言っていまして、株主総会でも株主さんとブレーンストーミングを一緒にやろうか、といった話が出てきました。そういうことも人事のミッションに入れてやっています。
第一のお客さんは社内
横石:お2人とも人事の仕事もしながら、会社組織のカルチャーをつくっていく仕事もされている。
篠田:人事に限った話ではないのですが、ほぼ日の管理部門では「第一のお客さんは社内」だと思っています。私がかつていた大企業などは、管理部門は「ルールをつくる」のが仕事というマインドでした。だから、「みんなが言うことを聞いてくれない」と平気で言います。でも社内がお客さんだと、たとえば営業の仕事で「お客さんが買ってくれない」が成立しないのと同じで、新しい就業規則や、勤怠のルールを考えたときに、「言うことを聞いてくれない」は、仕事として成立しないんです。
柴田:カヤックの管理部門の中には、ある社員の名前がついたルールがあります。その社員は本当にルールを守らない社員で……。それで、ある時から「本当はみんなルールを守りたくないけど、理性なのか常識なのか、お付き合いなのかで守っているのではないのか」と思い、その社員ですら守れるルールに変えよう、と考え方を変えました。
横石:カヤックさんならではのルールメーキングですね(笑)。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら