富士フイルム、不祥事に「反省の色なし」の声 総会に個人株主殺到だが社長は多くを語らず

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回答に立った吉沢勝取締役は「富士ゼロックス本社の経営管理機能が弱かった。HDのゼロックスに対するガバナンスにも問題があった」と認めた。吉沢氏はこの6月から富士ゼロックス専務に就き、本社部門の責任者を務めている。助野健児社長も「(子会社が)やりたい放題ではないかというご指摘をいただいても仕方がない状況かと思う」と補足した。

HD側は2016年10月時点で不正会計のおそれがあると把握していたが、富士ゼロックスによる「問題ない」という報告を受け、そこでとどまっていた。吉沢氏は「3月まで自ら実態解明するというような強硬なアクションをとらず反省している」と述べた。

「ニュージーランドではうわさになっていたという報道もある。なぜ調査に踏み切らなかったのか」。女性株主が質問に立つと、吉沢氏が回答した。「現地メディアの報道が出た後に富士ゼロックス本社経由で確認したが、問題ないということで済んだ。だが3月に監査法人からの指摘があり、関係者へのインタビューや30数万通のメールなど広範囲な調査を実施した」。

元富士ゼロックス社員が要望したこと

最後に挙手したのは、富士ゼロックスに35年間勤めたという男性株主だった。質問というよりは要望のような内容を口にした。

「富士ゼロックスはのびのびしたよい会社。ただ役員や管理部門に統制が入るということで、社員は非常に萎縮している」としたうえで、「社員やご家族の方が萎縮しないよう、今後(古森重隆会長と助野社長の)お2人の力で愛情を持って、信頼が得られる会社にお導きいただきますようお願いいたします」と話した。会場からは拍手がわき上がった。

富士フイルムホールディングスの助野健児社長は6月12日に会見を開き、第三者委員会の報告書を発表した(撮影:風間仁一郎)

終了後、総会に参加した株主に話を聞いてみると、普段は株主総会に出席しないが、富士ゼロックスの問題から初めて参加したという人も少なくなかった。率直な感想を求めると、「反省の色は見られなかった」などとネガティヴな意見の方が多く聞かれた。

また「助野社長が1~2割程度しか話さず、他社の株主総会と比べて社長が自分の言葉で話す場面が足りなかった」と、社長自身の説明不足を指摘する株主も。議長は助野社長が務めたが、実際は担当役員に話を振る場面が多かった。

HDのCEOである古森会長は、今月から富士ゼロックスの会長を兼務しガバナンスの強化に取り組む。だが古森会長が総会中に話したのは、「琴の先生の葬式で花束が届いていたのは古森会長の親族からか」という株主からの質問に対して、「琴の方面での知り合いはあまりおりませんので私ではないかと思います」という場面のみだった。富士ゼロックスの今後について、古森会長自身による説明はなかった。

もっとも「事業面でちょっとやけどしたくらいで心配していない」と考える株主は少なくない。出席株主数は大きく増えたものの、総会自体は落ち着いて進行した。「過去ではなく今後1~2年の結果を見ていきたい」。別の株主がそう話したように、投資家は事業での挽回を期待している。

遠山 綾乃 東洋経済 記者

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とおやま あやの / Ayano Toyama

東京外国語大学フランス語専攻卒。在学中に仏ボルドー政治学院へ留学。精密機器、電子部品、医療機器、コンビニ、外食業界を経て、ベアリングなど機械業界を担当。趣味はミュージカル観劇。

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