黒田電気「旧村上ファンド」提案可決の舞台裏 大阪で開催された株主総会で何が起きたのか
ただし、レノが提案した安延氏の用紙には、ほかの候補者と異なり、「反対/賛成」とあり、「反対」が先に書いてあったのだ。ある株主は「反対を先に書く会社のやり方はアンフェアだと感じた」と話した。総会後、会社側に確認したところ「反対を先にしたのは株主に(会社提案ではなく株主提案であることを)わかりやすくするため」だったという。
12時40分に集計のために一時中断し、10分後に再開。結果、会社側の提案に加え、レノによる株主提案も可決された。委任状獲得競争の草分けともいえる村上氏の株主提案が通るのは、実はこれが初めて。過去は3戦全敗だった。村上氏以外でもスティールパートナーズの提案が通って以来、8年ぶりだ。株主提案が可決されるのは稀なのである。報告した細川浩一社長の表情は、出席した株主によれば「どこか残念そうだった」という。
閉会後、黒田電気幹部は記者団に対し「会社提案が可決されたということは新中計が株主に受け入れられたことだと理解している」と語った。一方で、株主からは「これだけ業績が悪化しているのだから、(レノ側の)株主提案が通ったのは当然。新中計が達成できるかどうか疑わしい」という声もあった。
村上氏「黒田電気がいい会社になってくれれば」
総会直後の取締役会を終えた後、安延氏は東洋経済の取材に応じた。「私が選任されたということは株主提案の3つの理由が承認されたことを意味する。3つの理由が実現されるかどうかを見守っていくし、実現されなさそうなら意見を言うつもりだ」と就任の決意を語った。
3つの理由とは「規模の利益追求のための他社との経営統合の検討・議論の推進」「従業員声明文捏造事件(2015年の臨時株主総会前、村上氏を社外取締役に据える株主提案に従業員が反対する声明文を出したが、これが捏造だったもの)に見られるコーポレートガバナンスの欠如の解消」「300万株(総額80億円)の自己株取得の今期中の実施」。平たくいえば、同業他社のM&Aの検討、ガバナンスの充実、自己株取得だ。
シンガポールから総会の推移を見守っていた村上氏は、提案が可決された直後、東洋経済の取材に対し「黒田電気がいい会社になってくれればいい」とコメント。「安延氏が独立取締役として選任されたことを重く受け止め、今後、安延氏との連絡は一切絶つつもりだ」とも語った。
投票結果の詳細は30日公表予定の臨時報告書で明らかになる。村上氏の関連会社が議決権の37%を有していたほか、米議決権行使会社ISSが賛成を推奨していたが、同業のグラスルイス社は反対を推奨していた。
実際の議決権行使状況はどうだったのか。レノなど村上氏の関連会社は細川社長の再任に反対票を投じていたともみられるので、会社提案の投票結果も気になるところだ。
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