東京人でも意外と知らない「東京の森」の現状 東京の面積の約4割を森林が占めている

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もともと東京都では、学校や住宅、公園などの公共施設の増改築の際に、多摩産材を積極的に利用してきた。二俣尾(ふたまたお)保育園や都立総合芸術学校、首都大学東京南大沢キャンパスなどでは、多摩産材を用いた木のあたたかみのある空間で学ぶことにより、子どもたちや学生が木を身近に感じ、木のよさを知ることにつながっているという。

しかし、公共施設での活用だけでは、PR効果に限界がある。そこで、さらなる民間需要の開拓を狙い、昨年度からさまざまな戦略を打ち出している。その目玉となるのが、この「にぎわい施設で目立つ多摩産材推進事業」だ。大規模な商業施設で多摩産材を使うことで、多摩産材の知名度の向上と利用拡大を狙う。また、朝日新聞総合住宅展示場ハウジングプラザ三鷹第一会場には、多摩産材のモデルハウスを設置。木造住宅のPR拠点とし、住宅利用のさらなる拡大もめざしている。モデルハウスの建築にあたっては、1棟につき1250万円を都が補助する。

こうしたハード事業に加えて、建築士に木材への理解を深めてもらうための支援事業(「建築士の木づかい推進事業」)や、木材製品の魅力を伝える製品展示会を開催するなど、ソフト事業にも力を入れている。特に、東京だけでなく日本各地の木材関係事業者が集う「WOODコレクション(モクコレ)」(2016年)は日本初となる試みで、来場者からも好評を博した。来年は規模を一気に拡大して会場を東京ビッグサイトに移し、1月30、31日の2日間で開催予定だ。木を使って森を育てる――。多摩産材だけでなく各地の地域材の木材利用の拡大に向け、オールジャパンで都市部の木材需要を喚起し、木の魅力を発信している。

具体的な都内の活用事例

神田明神文化交流館(写真提供:鹿島建設)

神田明神文化交流館(千代田区)
地上4階・地下1階建て、延べ床面積約3700平方メートル。多摩産材の使用量は、96.412立方メートル。今年6月に着工、2018年11月末竣工予定。1階に土産物の物販や喫茶、2~3階に多目的ホール、4階に和室と屋上庭園を備えた複合施設となる予定だ。

多摩動物公園駅 子ども向け遊戯施設 (日野市)
京王電鉄は2018年春、京王線多摩動物公園駅前に新たな子ども向け遊戯施設を開業する。1階には、木のおもちゃに触れ合うことで木材や環境への理解を深める「木育(もくいく)エリア」 と、ネット遊具などのある「体育エリア」。2階には、ワークショップを開く「知育エリア」のほか、ミニ蒸気機関車を走らせるスペースやテラス席を併設するレストランが設置される。延べ床面積は約2900平方メートル。多摩産材は内装材や什器の一部に使用される。使用量は、15.316立方メートル。神田明神文化交流館と同じく、「にぎわい施設で目立つ多摩産材推進事業」に指定されている。

二俣尾保育園(写真提供:東京都)

二俣尾保育園(青梅市)
2010~2011年、多摩産材を使い木のぬくもりあふれる園舎に改修。内装材のほか、ロッカーなどの什器やトイレの間仕切りにも、多摩産材が使用されている。都は昨年度から、保育園や幼稚園の遠足で多摩の森に行き森林体験をするなど、木育推進事業にも力を入れている。

東京都庁特別応接室
諸外国から訪れる要人や特別な来賓などの応接に利用される都庁の特別応接室にも、多摩産材の什器が導入されている。小池百合子都知事が定例会見で使用する複数のマイクが設置された資料置き台も、多摩産材製品。メディアの露出が高い場所で、積極的に利用を進めている。

多摩産材現地見学ツアー(写真提供:東京都)

(多摩産材現地見学ツアーの開催)
東京都は、2016年から「建築士の木づかい推進事業」を実施。建築士や、建築関連の仕事を志す大学生・大学院生を、伐採現場や原木市場、木材加工所などに案内し、木材への理解を深める現地見学ツアーを開催している。また、木材利用に関する講習会の受講費用の支援も行っている
(次回は2017年秋に開催予定で、詳細が決まり次第、HPにて告知)。

山上 さくら 編集者・ライター

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やまがみ さくら / Sakura Yamagami

1980年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。職、食、住、科学などの分野をメインに編集・執筆。

 

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