証取委、会社役員のインサイダー取引に「喝」 TOBをめぐり2540万円の"濡れ手でアワ"
6月27日。証券取引等監視委員会がインサイダー取引をした疑いで、菊原正二氏こと朴正二(パク・ジョンイ)氏(55)と小林史伸氏(50)を大阪地方検察庁特捜部に告発した。
監視委員会によれば、婦人靴・雑貨開発販売会社、卑弥呼の取締役だった小林氏が投資会社リサ・パートナーズ(NECキャピタルソリューションの100%子会社)から卑弥呼の株式公開買い付け(TOB)を行うことを知ったのは2016年2月18日ごろのことだ。小林氏は同3月3日ごろにTOBの事実を知人の菊原氏に伝えた。
菊原氏は同7日〜17日にかけて卑弥呼の2万2000株を1988万9000円で買い付けた。平均取得単価は904円、TOB価格は2059円だから、このインサイダー取引で約2540万円の利益を得た模様だ。小林氏と菊原氏が利益をどう配分したかは今後の公判で明らかになる。
リサ・パートナーズが本TOBのために設立した目的会社は、2016年3月22日〜同5月24日までTOBを実施。98%の卑弥呼株を取得しTOBが成立。卑弥呼は同6月16日に上場廃止となった。卑弥呼はリサ・パートナーズの完全子会社となり、経営再建を進めている。
「知人3人」ではなく「知人1人」?
課徴金納付命令ではなく特捜部への告発としたのは、上場会社の取締役がTOBという重要事実を聞いて知人に伝達、インサイダー取引を引き起こしたことを悪質だと監視委員会が見たからだ。
報道によれば、監視委員会はインサイダー取引の疑いで2016年11月24日に卑弥呼の関係先に強制調査をしていた。監視委員会は、それだけ事件性が高いと当初からみなしていたことになる。
強制調査当時は「卑弥呼関係者の知人3人」が卑弥呼株を購入し、値上がり後に高値で売り抜け、それぞれ1000万円前後(=計3000万円前後)の利益を得たとされていた。
当時の報道と金額的に大差はないが、「知人3人」は「知人1人」だったことになる。菊原氏以外の2人は誰なのか、なぜ今回お咎めなしなのか、そもそも誤報で最初から1人だったのかは不明である。
今回の事件の背景にはそもそものTOB価格の高さがある。TOB価格を決めた当時の卑弥呼株は800円台前半。第三者の助言会社であるプルータス・コンサルティングは収益還元法で2005円、SMBC日興証券はDCF法で2025円〜2121円と弾いた。
TOB価格は最終的に2059円に決定した。SMBCの意見の範囲内だが、プルータスの意見よりも高い価格だ。しかも卑弥呼株の実勢株価の2〜2.5倍というのはいかにも高い。TOB価格の決定に小林氏は取締役時代にどこまで関与していたのか。監視委員会の見立てどおりに本件が本当に悪質だったと言えるかどうかは、今後の公判で明らかにされるにちがいない。
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