長老が教える、心に「ためこまない」生き方 日々に役立つ、スリランカ仏教の智慧

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「ためる」ことについて、まず、効果的な解決方法を2つほど紹介してみましょう。

1つ目は、「何を(What)、何のために(Why)、どれくらいの分量(How much)、どれくらいの期間(How long)ためるのか」という問いに対して、つねにちゃんと答えを持っておく、ということです。

「何をためるの?」と聞かれて「何でもいい」、「なぜためてるの?」と聞かれて「自分でもよくわからない」と答えているようでは話になりません。

そうではなくて、What、Why、How much、How longという質問に対してちゃんと答えを持っておく。そうすれば倫理と道徳とを考えて、適切にためることができるようになります。

とりわけ重要なのはWhyです。ためる目的をはっきりさせることができれば、おのずとHow muchやHow longも決まってくるはずです。

たとえば、貯金というのは、ただ漠然と将来のために貯めるのではなく、「これは海外旅行用に」「マイホームやマンションの頭金用に」「子どもの教育資金用に」……といったように、「なぜためるのか」というのをはっきりさせておけば、貯めるべき金額や期間も具体的にイメージできるはずです。

当たり前のことがなかなか実行できていない

2つ目の解決法はごく単純なものです。それは、「ためたら、使う」です。

ごく当たり前のことを言っているように思われるかもしれませんが、実は、多くの人はこの当たり前のことがなかなか実行できずにいるのです。要するに、ためたものは、適切に使わなければならないのです。適切に使わなければ、使用期限が切れて、他人のものや無駄なものになってしまうことがあるからです。

たとえば、親が亡くなったら、子どもは、親が大事にためた高価な品物を無用のものとして処分してしまうものです。それは必ずしも親不孝というわけではありません。親の宝物は子どもたちには使用できないからなのです。

フランスのベルサイユ宮殿は、ルイ14世が絶対王政の権力を誇示するために建てたものです。しかし、王政が廃止になると、宮殿は一般国民の財産となりました。今では、誰でも見学できる観光名所になっています。このことは、ルイ14世の立場から考えれば、腹が立って仕方がないことでしょう。

つまり、自分が使う目的でためたものは、自分で使うしかないのです。自分が使わなかったものは、他人のものになります。そしてそれは、自分の気持ちに反したことに使われることになるのです。

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