セブンとイオンが築けない「ネットで稼ぐ力」 この牛歩ではアマゾン防御壁さえつくれない

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しかし現在、ネット通販事業の数値はいっさい開示しておらず、今後の数値目標もなし。デジタルシフトの成果はまるで見えない。イオンは2000年にネット通販サイトの「イオンショップ」を立ち上げて以来、次々と新しいサイトを開設してきた。2017年6月現在、総合情報サイト「イオンドットコム」に掲載されているネット通販関連サイトの数は40近くある。

小玉氏は当時、「差別化を図るため、アマゾンや楽天など先行している専業の有力プレーヤーから、いろいろ学んできた」とも語っていた。実際は、サイトが乱立しており、業界内からも「イオンはネット通販で何をしたいのかわからない」と、厳しい評価ばかりが聞こえてくる。

複雑なイオンドットコムの沿革

ネット戦略の一翼を担うイオンドットコムの沿革も複雑である。2000年に設立されたイオンビスティーから2度の社名変更とグループ会社1社の吸収合併を経て、2016年4月にようやく現在の体制に落ち着いた。

同社が運営するのは、総合情報サイトの「イオンドットコム」やネット通販サイトの「イオンドットコムダイレクト」。一方、「イオンネットスーパー」や、ギフト中心の「イオンショップ」など、多くのサイトは総合スーパー事業を展開するイオンリテールが手掛ける。食品スーパーの「ダイエーネットショッピング」や、ドラッグストアの「ウエルシアドットコム」など、グループ会社がそれぞれ運営するものもあり、各サイト間での相互送客が図れていない。

そのため、グループのネット通販の連携を強化し、各サイトの集客力と販売力を高めるのがイオンドットコムの役割だ。サイトからスーパー店頭への客の誘導など、実店舗の活性化も重要な役割となっている。

組織面でも横串を刺した。2017年3月、イオンリテールに社長直轄の営業推進本部を新設。同社のオムニチャネル推進本部長だった齊藤岳彦氏が営業推進本部長となり、イオンドットコムの社長も兼務する。「ナンバーワンを目指す」としてから5年。グループの組織変更を繰り返し、ようやくネット事業強化のスタートラインに立った格好だ。

牛歩ともいえる流通2強のネット戦略。アマゾンとは違う立ち位置を築くどころか、対アマゾンの防御壁すら作れずにいる。

又吉 龍吾 東洋経済 記者

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またよし りゅうご / Ryugo Matayoshi

2011年4月に東洋経済新報社入社。これまで小売り(主にコンビニ)、外食、自動車などの業界を担当。現在は統括編集部で企業記事の編集に従事する傍ら、外食業界(主に回転ずし)を担当。趣味はスポーツ観戦(野球、プロレス、ボートレース)と将棋。

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中山 一貴 東洋経済 記者

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なかやま かずき / Kazuki Nakayama

趣味はTwitter(@overk0823)。1991年生まれ。東京外国語大学中国語専攻卒。在学中に北京師範大学文学部へ留学。2015年、東洋経済新報社に入社。食品・小売り業界の担当記者や『会社四季報 業界地図』編集長、『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報』編集部、「会社四季報オンライン」編集部、『米国会社四季報』編集長などを経て2023年10月から東洋経済編集部(編集者・記者、マーケティング担当)。「財新・東洋経済スタジオ」スタッフを兼任。

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