セブンとイオンが築けない「ネットで稼ぐ力」 この牛歩ではアマゾン防御壁さえつくれない
だが、いきなりつまずいた。当初は2017年夏にアプリを出す予定だったが、2018年春にずれ込むのだ。井阪社長は「ナナコ(セブン&アイグループの電子マネー)のデータを活用して開発を行う予定だったが、間口が狭すぎた。現金決済する人のデータも含めて作り直している」と説明している。
あるセブン&アイ関係者は「開発に時間をかけすぎだ。アマゾンが矢継ぎ早に新サービスを打ち出す中、こうした遅れは致命傷になりかねない」と嘆く。
「セブン&アイの商品しかないなら、アマゾンで買う」
問題はそれだけではない。オムニセブンはセブンプレミアムなどのPB(プライベートブランド)やメーカーとの共同開発品を中心に商品を取りそろえたものの、自前路線を中心にした戦略で成果が出ていない。小売業界に詳しいフロンティア・マネジメントの山手剛人シニア・アナリストは、「手に取れないものをネットで買う場合は、何でもそろっているのが前提。セブン&アイグループの商品しか買えませんというのであれば、アマゾンで買うという話になりかねない」と指摘する。
オムニ戦略はネットで購入した商品のセブン‐イレブン店舗での受け取りや返品などができるという点も特徴の一つだった。商品を取りにコンビニに来れば“ついで買い”も期待されるので、店舗の売り上げ増にもつながると見込んでいた。だが、東京都内でセブン店舗を運営する加盟店オーナーは「ネット商品の受け渡しは、正直、週に1〜2回」と打ち明ける。ネット販売が振るわないため実店舗との相乗効果が出ない。戦略を見直したもののアプリの開発が遅延する。セブン&アイのオムニ戦略は視界不良が続きそうだ。
セブンよりもさらに後れを取っているのがイオングループだ。
2012年当時、イオンリンク(現・イオンドットコム)の小玉毅社長は「イオングループはここ10年、ネットの世界で実質的に何もしてこなかった。最後発ながらナンバーワンを目指す」と鼻息が荒かった。また2014年に発表したグループの中期経営計画でもデジタルシフトの加速を強調した。