FRB「笛吹けど踊らず」、年末1ドル100円に みずほ銀行の唐鎌大輔氏に聞く

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――足元の経済指標の動向が弱かったにもかかわらずFOMCが見通しを変えていないのはなぜですか。

弱い指標は一時的だという判断をはっきりと口にしている。消費者物価指数など物価の低迷は一時的なもので、携帯電話や処方箋の価格にまつわる短期的なノイズがあったとイエレン議長は発表している。そのほかの小売売上高などのハードデータの弱含みも続くものではないと考えているようだ。

今回の発表で最も気になったのは、失業率の見通しが顕著に改善しているにもかかわらず、インフレ率の見通しが変わっていないことだ。自然失業率(完全雇用における失業率、構造、摩擦的な失業しかない状態)が一定だとすると、自然失業率を大きく割り込んで既に完全雇用に達して、失業率の見通しが改善するというのが、今の状況であれば、理論上インフレは加速しなければならない。

しかし、そうなっていないということはFRBが考えていたよりも自然失業率は低かったということなのだろう。つまり現在の状態はまだ完全雇用に達していないという判断になったとも言える。本来、それは利上げを踏み止まらなければならない状況だろう。こういう所に少しずつ矛盾が生じている。

3月の利上げ時に反対票を投じたカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁は前回に続いて同銀HPで「なぜ私はまた反対したのか(Why I Dissented Again)」といったエッセイを公表しており、やはり完全雇用という評価への不安を吐露している。そのほかにも極めて真っ当な理屈から反対論を展開しているので一読をお勧めする。およそ人が足りないと言っているのに賃金が上がらないということはない。今は完全雇用状態から遠いと判断するべきだろう。

年末には1ドル=100円を臨む展開に

――インフレターゲットが達成できないことにはどういった背景があるのでしょうか。

FRBは物価の指標としてコアPCEデフレータ(個人消費に関わるインフレ率)に注目しているが、安定的にこれが2%を越えるためには、経験則に照らせば、平均賃金の伸びは3%を上回って4%前後で安定しないといけない。2017年3月時点では2.5%程度しかない。失業率が下がっていても賃金が上がっていかないことが問題と言える。失業率の低下がコアPCEデフレータに反映されてこない現状がある。これは結局、完全雇用状態から遠いからそうなっているのだろう。

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