FRB「笛吹けど踊らず」、年末1ドル100円に みずほ銀行の唐鎌大輔氏に聞く

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――今後1年間の為替見通しについてはどのように見ていますか。

年末に100円を臨む展開になると思う。大統領選の前は100~105円のレンジだった。トランプ大統領への期待だけで118円まで上がっていって、そこから下がってきた。その期待がほとんど剥落した割にはよく持ちこたえているなと感じている。確かにトランプ政権への期待は下がっているが、FRBがこのところ3度の利上げ(2016年12月と2017年3月、6月)を実施しているので、これによってドル円相場が持ちこたえているという見方はできるかもしれない。足元でやや円安に振れたのは日経平均株価が上昇しているのでリスク許容度が改善し、円ショート(売り)を積み増しする動きが一時的に出ているのだろう。

結局、為替相場というのはアメリカの意向で決まる。アメリカの通貨政策がどちらを向いているか、トランプ大統領がドル高とドル安のどちらを志向する人物なのか。考えるまでもない話であり、現時点から一方的なドル高円安を予想する向きは本当に勇気があるなと思う。日銀は16日の政策決定会合で現状維持を決めており、当面は現状維持が見込まれる。しかし、既に述べたようにFRBの利上げは先行きが怪しく、トランプ大統領も内政で困れば通貨政策で支持層の気を引こうとする可能性がある。日銀は「座して円高を待つ」状態であり、そうなった時に何もできそうにないことが心配である。

「利上げ」は株価が上がる政策ではない

――米国の株価は上がっていますね。

今は利上げをしても、長期金利は上がらず、株価は高い状況だ。そういった誰もが得をする状況が、続くわけではない。FOMCの中でも、米国の株価については割高だという議論が出ており、その上で利上げを重ねている。株は相当危ない状態になっている可能性がある。

アメリカの景気拡大局面は96カ月まで来ている。その終わりが近くなっているのではないかと考えている。例えば完全雇用に近づいているのであれば一巡してきているという見方もできる。利上げというのは引き締め政策であって、株が上がる政策ではないという基本的なことは思い出したほうがよいのではないか。

菊地 悠人 東洋経済 記者

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きくち ゆうと / Yuto Kikuchi

早稲田大学卒業後、東洋経済新報社に入社。流通・小売業界の担当記者を経て2017年10月から東洋経済オンライン編集部。2020年7月よりIT・ゲーム業界の担当記者に。

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