FRB「笛吹けど踊らず」、年末1ドル100円に みずほ銀行の唐鎌大輔氏に聞く
――年内の追加利上げとFRBのバランスシートの縮小見通しに対してはどのように考えていますか。
私は、今回の6月で利上げがストップするのではないかと見ているが、FRBの現時点の見通しとしては9月または12月に利上げするようになっており、市場でもこれを支持する向きがある。本当にそんなことができるのか疑問だ。
FRBはバランスシートの縮小と利上げを並行するつもりのようだ。バランスシートの縮小は少しずつ行うので、副作用は限定される、というのがFRBの思いと見られる。
だが、そもそもバランスシートの拡大を緩和とうたってきた以上、縮小は金融の引き締めになるはずだ。利上げと併行することは米国経済にとって相当な引き締め策になる。
バランスシート縮小の影響はこれまで経験がないし、今後の国債市場の需給環境にもよるので現時点では読めない部分が大きい。もし、トランプ大統領が財政の大盤振る舞いをするために、国債を大量に発行し、それがバランスシートの縮小とぶつかれば金利は跳ねやすくなる。また、海外の中央銀行による米国債購入の程度にも左右されるだろう。これも読めない。
インフレは進まず、まだ完全雇用ではない可能性
――なぜFRBはバランスシートの縮小をするとしているのでしょうか。
ひとえに「のりしろ」を作っておきたいと考えているのだろう。次の不況が来た時に、対策を講じることができないのでは、FRBも困ったことになる。利上げしておけば、利下げする余地ができる。バランスシートを縮小しておけばいずれ拡大できる。一部のFRB高官はこのような「のりしろ論」を口にするようになっている。
2018年2月のイエレン議長の任期終了後は、議長を含めトランプ大統領の意を汲んだ人事がFRBにも及ぶことになるだろう。そうなればもう正常化は思うようにできなくなるかもしれない。だから、今のうちにバッファーを作っておきたいというのが、イエレン議長の正直な気持ちなのだろう。中央銀行の性のようなものだと思う。その気持ちは分からなくはないが、足元の基礎的経済指標を度外視して進める利上げに持続性はないだろう。弱い経済に対して利上げを重ねていけば、景気のオーバーキルを懸念するのが自然で、それは明らかに円高ドル安要因と考えられる。
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