新幹線「最後部座席後ろの空間」は誰のものか 訪日客は荷物の置き場所に悩んでいる

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大きな荷物を旅先から宅配便で自宅に送ったという経験のある人は少なくないだろう。重そうなスーツケースを持って旅行する外国人を見て、「そんなに大きな荷物を運ぶなら、宅配便を使えば良いじゃないか」と感じる人もいるだろう。であれば、訪日客たちに日本国内をより快適に旅行してもらうために「荷物の運搬から解放されますよ」と、宅配便の利用を勧めてみてはどうか。日本国内の空港によっては送り先限定で当日配達も受けてくれるし、日本国内ならたいていの場所に2~3日あれば送り届けてもらえる。

荷物が減れば静岡や愛知への立ち寄り需要が生まれる

外国人の宅配便利用はあまり進んでいないようだが、筆者はその理由を「宅配便のような優れたサービスが自国には存在しないため、そんなすばらしいものが日本にあることなど想像できないから」と考える。日本人なら誰でも知っていることだが、他の国では安価でかつ短時間で運べるサービスはまず存在しない。あったとしてもものすごく送料が高く、リーズナブルな旅を楽しみたい旅行者には向かないものだ。ちなみにスイスには、国内各地の主要駅間をつなぐ荷物運搬サービスがあり、追加料金を払うと宿泊先ホテルまでも運んでくれる。このサービスのおかげで、荷物の運搬に頭を悩ますことなく、観光列車や遊覧船を使った細かなルートを巡る旅行が実現できる。ただし料金は高い。

スイス国鉄では次の目的地まで荷物を運んでくれるサービスがある。ピンク色のタグには行き先や旅客名が記載されている(筆者撮影)

現状、東京から京都まで「ひかり」で直行する外国人の個人旅行客がとても多い。だが、荷物の運搬から解放されることで、たとえば新幹線の沿線にある静岡県や愛知県などに数時間でも立ち寄る、あるいは身軽に1泊するといった新たな旅行需要が生まれるかもしれない。

いまや日本人出国者数よりも外国からの入国者数が上回っている時代だ。しかも個人旅行による訪日客が右肩上がりで増えている。外国人が個人で手軽に旅行できるようにするための対策を考えてもよい時期に来ているのかもしれない。訪日客へのさらなる「おもてなし」につながるという理由だけではない。日本人旅行客にとっても列車の旅がより快適になるはずだからだ。

さかい もとみ 在英ジャーナリスト

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Motomi Sakai

旅行会社勤務ののち、15年間にわたる香港在住中にライター兼編集者に転向。2008年から経済・企業情報の配信サービスを行うNNAロンドンを拠点に勤務。2014年秋にフリージャーナリストに。旅に欠かせない公共交通に関するテーマや、訪日外国人観光に関するトピックに注目する一方、英国で開催された五輪やラグビーW杯での経験を生かし、日本に向けた提言等を発信している。著書に『中国人観光客 おもてなしの鉄則』(アスク出版)など。問い合わせ先は、jiujing@nifty.com

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